「あのクソ野郎(字幕表現)はなに?」すべてうまくいきますように t2law0131さんの映画レビュー(感想・評価)
あのクソ野郎(字幕表現)はなに?
『海を飛ぶ夢』(アレハンドロ・アメナーバル監督 2004年)や『みなさんさようなら』(ドゥニ・アルカン監督 2003年)といった、死期をコントロールしたいと願う主人公を軸に、周りにいる家族たちを描くモチーフは、さまざまな形で描かれる。尊厳死テーマで言えば、日本映画でも昨年話題になった『プラン75』というディストピア作品が記憶に新しい。邦画史的には『楢山節考』に行き着くのは自明。で、本作はその系譜。いまや巨匠呼ばわりされているフランソワ・オゾンが、ゲイにバイアスがかかっていない、真っ当なホームドラマを演出。配給はキノフィルムズ。かつて『8人の女たち』や『スイミング・プール』などの頃はギャガ配給だったことを思い出す。ともあれ、エマニュエル・ベルンエイム(『スイミング・プール』の脚本家)の自伝的小説が原作というから、ほぼ実話なのだろう。脳梗塞で真っ当な生活ができなくなった85歳になる父親が、ソフィー・マルソー演じる長女に尊厳死を望む、という物語。そんな一家の、父が目的を遂げるまでのあれこれが、冷静にスケッチされていく。高齢化が極まった日本では、日常的に『意識』せねばならないテーマだが、フランスの娘たちは、達観してるのか、後半は淡々とゴールへ進んでいく。この妙な冷静さが軽く怖いお話だった。
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