「グロを通り越した先に皮肉とユーモアが」TITANE チタン 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
グロを通り越した先に皮肉とユーモアが
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子供の頃交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれた少女が成長し、なぜか車に性欲を感じる奇妙で凶暴な人間へと変貌する。デヴィッド・クローネンバーグの『クラッシュ』を過激にアップデートしたような話だが、物語はさらにアクセル全開に。犯罪者として逃亡中のヒロインは10年前に失踪した息子の帰還を待つ孤独な消防士の前に息子を装い現れ、彼の懐に潜り込む。
人間が持つ肉体の常識をことごとく打ち砕き、観客を道連れに暴走するような映画に、カンヌはパルムドールを与えた。確かに、人を選ぶ映画かもしれない。しかし、グロテスクな描写が続いた後に訪れる不思議な感動は、今年唯一無二のもの。そして、何よりもグロを通り越した先に痛烈な皮肉とユーモアがある。特に、青年の形をした主人公が突然ストリップショーを始めると、それを見ていたマッチョな消防士たちがモジモジし始めるシーンは笑える。
とにかく、全編が想定外の展開と衝撃と笑いで構成されていて、息つく暇もない。前衛的でありながらロマンチック。ファッションに例えるなら、かつて一世を風靡した"フレンチ・パンク"の復活と言えるだろうか。
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