「映画的IQは高い」レッド・ロケット しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
映画的IQは高い
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「フロリダ・プロジェクト」のショーン・ベイカー監督。
「フロリダ〜」はキッツい状況に生きる子どもたちをリアルに描きながらも、そういう暮らしの中にある“キラキラ”を掬い上げ、実に巧みにスクリーンに映し出していた。
落ち目のポルノ男優マイキーを主人公に据えた本作も、登場人物全員が無職か非正規で、売春あり、麻薬販売ありの暮らしをしている。
隣に住む心優しい友人を巻き込んだマイキーの「罪」は裁かれず、また、マイキーが当てこんだ一発逆転で再起するプランもうまくいかない。
このように映画的な予定調和を否定しながらも、映画としては素晴らしいシーンの連続だ。
例えばラスト近く、マイキーは全裸で町を走る。
マイキーはそれにふさわしいクズ男、何しろ画面で脱ぐのが本職である。
走る舞台もまた、石油精製工場以外ロクな産業がない埃っぽい町。
このように、このシーン1つとっても、背景と画面の説得力にまったく隙がない。
ポール・トーマス・アンダーソンの名作「ブギーナイツ」への参照もあり、映画的IQの高さを感じる作品。
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