「移動はママチャリ」レッド・ロケット ジョンスペさんの映画レビュー(感想・評価)
移動はママチャリ
めちゃくちゃおもしろい! 笑える! 主人公マイキーがクソ最低でクソ最高すぎる! 徹底した自己中野郎で、自分が周りに対して不利な状況では憐れみを誘い責任を回避し、有利な立場では恩着せがましくとことん利用する。そうするためにウソでも本音でもひたすら主張し、どんどん調子に乗っていく。あの惨事の責任をロニーに押し付け逃げ切った時のうれしがりようたるや、本当にクズの面目躍如である。古い漫画で言うとカメレオンの矢沢栄作的。
今年の年明けに公開された、そして僕は途方に暮れるの主人公はすぐに逃げる後ろ向き・消極的なダメ人間であったが、こちらは前向き・積極的なクズ人間で、ラストワンシーンまでポジティブなのだ。いわゆるサイコパスなのかもしらんけど、これはこれでひとつのピカレスクロマンという気がする。
なんで自分はこういう人間になれないのだろう…という悔しさすら感じるが、終盤、同じポルノ男優の物語であるブギーナイツのマーク・ウォールバーグ同様にポロリ(というかぶらんぶらん)があり、この立派なイチモツがマイキーの過剰な自信の裏付けなのかも?と思うと、やはり自分には無理(涙)。
出てくるキャラがみんなクソでダメ人間というのも愛すべき哀しさ。そんな中でおっさんと女子高生というNGな間柄などおかまいなしに口説き落とされるキュートなそばかす顔のストロベリーは、もくもくと排煙が流れる工場群が背景の干からびた街にポツンと建つカラフルでポップなドーナツ屋そのもの。時折マイキーと庭で目が合う飼い犬の表情がすべてを見透かしているかのようでまたおかしい。
年に何本かはこーゆー作品が観たい。ほんとショーン・ベイカー監督すばらしい!