劇場公開日 2022年4月22日

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「エミリー」パリ13区 maduさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5エミリー

2022年7月20日
iPhoneアプリから投稿

世間の悪意や好奇心に晒されるような関係を美しく軽やかに描いている作品。

私は、この作品の登場人物たちと同世代でエミリー、カミーユ、ノラの3人にそれぞれに共感し共鳴する部分があった。
パリ13区とゆう移民が多いエリアに集まった人種も性別も違う3人のツギハギの人生が収まるところに収まる、ロマンティックでもあってヒリヒリと痛いリアリティーのある絶妙なバランスがたまらない感じはセリーヌ・シアマとレア・ミシウスの2人の共同脚本によるものなのかなと思った。
監督と脚本家達、女性と男性、それぞれのセクシャリティーは、しっかり線引きされているようでグラデーションのような、舞台となるパリのパッチワークのような区画の地形と物語がリンクしているのを感じた。

大好きなのは、ルーシー・チャン演じるエミリーのイラつくような魅力的なような絶妙な振る舞い。

エミリーは問題のある人かもしれないが
人生において、あと先考えず辛辣な態度を取ってみたり、嬉しくって踊ってみたりしたくなることあるけれど、実際にはできない。
でもエミリーはやってくれる。だから映画の中のエミリーのことが好きになってしまう。
おばあちゃんのお見舞いに行きたくない気持ちも、めちゃくちゃ分かる。
好きとか嫌いでは割り切れない気持ちや、言語化できない不満や、先延ばしにして見ないことにしたいこと。それが、おばあちゃんの老人ホームの部屋に全部詰まっている感じで、これを描いてくれたことが
私は嬉しかった。
世間的には酷い孫だし、良い人であるためには行くべきだけど
行かなかったエミリーを否定も肯定もせず描いているのが良かった。
結局物語が動くのもおばあちゃんの問題が動くときなので、意外と物語の核でもあるのかもしれないと書いてて思った。

あと、ノラとアンバーの関係性は
(の先の発展は原作にはなかった部分らしい
)燃ゆる女のノエミ・メルランが演じているのもあってセリーヌ・シアマの筆致を感じてしまって、胸熱になってしまいました。好きすぎてここだけでもずっと語ってしまえるぐらい好き。

カミーユについて全然言及できてないが、あまりにも圧の強い2人の女性の物語に挟まれ、所在なさげにうつろう彼の物語もまたよい。
表向きは、教師をしていたし誠実で信頼できる雰囲気を醸し出してる彼が性へのだらしなさや、いわゆる男らしさの欠如などを抱えているのが良い。

私はこの3人の話の結末が好き。

madu