「ペトログリフは覚えられないのに」コンパートメント No.6 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
ペトログリフは覚えられないのに
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この映画、冒頭の音楽と、キャスト紹介の配色を観た数秒で好きになった。
ユーリー・ボリソフって、どうしてこういう不器用で愛らしい役が似合うのだろう。
ペトログリフは覚えられないのに
ハイスタ・ヴィットゥはちゃんと覚えてるってだけで、泣けるし笑顔になれる。
イリーナの人生の一部になりたかったラウラ。
でもイリーナは、マリリンモンローの「人間同士の触れ合いは、いつも部分的」という言葉を引用するだけあって、ラウラも、彼女にとってのその他大勢の1人に過ぎなかった。
彼女と行くはずだった旅は、だんだんと彼女に対する気持ちにケジメをつける旅となっていく。
旅が進むにつれて、イリーナはいい加減な奴だったということがどんどん明らかになっていくのだけれど、その分、ユーリー・ボリソフ演じるリョーハの比重が、彼女にとっても観客にとっても増していく。
それにしても、観ている自分は、なんで素直にリョーハに感情移入できるのかなぁと考えたら、彼がイリーナに対して、尊厳を傷つけるような態度を決して取らないことが理由の一つだと思った。
彼は、ラウラを愛していながらも、彼女がほのめかすパートナーに配慮したり、フリーの彼女に対しても、性的指向に配慮して決して一線は超えなかったりと、大事なところがちゃんとしてる。そういう所が安心感につながるのだろう。
また、脚本つながりでいうと、彼の生い立ちや、文字の読み書きができない理由や、あの豪快な謎理論のばあちゃんとの関係すらもはっきり示されない。その説明しすぎない所も、自分は好み。
結論として、公開時に見逃した事を残念に思うくらい、いい映画だった。
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