「ポール・バーホーベン健在のお知らせ」ベネデッタ カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ポール・バーホーベン健在のお知らせ
ポール・バーホーベンの17世紀に宗教裁判にかけられたレズビアンの修道女の実話を元にした作品。
権力への反発心からなのかはわからないが、忖度することなく色々な意味でぶっ飛んだ仕上がりになってるため、カトリック信者の抗議活動やロシアでの上映禁止などの騒動起こしている。
主人公のベネデッタはもともと妄想癖と思い入れが強く、自らをキリストの嫁と信じ特別な人間であるという自負を持っていたが、父親や兄達から性被害を受け教会に逃げ込んできた修道女バルトロメオを意識しだしてから聖痕が現れたり神の声を代弁するようになり、修道院長に昇格し個室を与えられてからは堰を切ったかのようにバルトロメオと逢瀬を楽しむようになる。
修道女を引き取るのに大金と寄付を要求する修道院長や、豪華な衣装と食事とお腹の大きい愛人がいる教皇大使など、信仰心を疑いたくなるような聖職者たちがベネデッタを糾弾していくが、彼らと比べると同じ己の欲望に忠実であっても、ベネデッタの方が心から神を信じているように見える。
バーホーベンが本国オランダを追われ、アメリカを追われ、辿り着いたフランスで撮った本作だが、フランスの役者さんはそれほど詳しくはなかったので、美しい金髪の修道女ベネデッタを演じたヴィルジニー・エフィラに関しては同じバーホーベン作品の「エル」に出ていた事さえ覚えていなかった。
しかしながら40代とは思えないほど美しい姿体と、欲望と信仰の狭間を2重人格のごとく自由に行き来する狂気の演技はつい見入ってしまうほどだった。
バルトロメオ役のダフネ・パタキアは年齢の割には幼さを感じさせつつも体当たりの演技で観るものにインパクトを残したが、昨年鑑賞した「ファイブデビルズ」でも印象的な役を演じていた事もありしっかりと覚えていた。
やっぱりバーホーベンが好きだと改めて思わせるような作品だった。
84歳とのこと、いつまでもお元気で。