「基本的に高評価だけど、日本との違いには要注意(本文参照)。」ドリーム・ホース yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
基本的に高評価だけど、日本との違いには要注意(本文参照)。
今年4本目(合計657本目/今月(2023年1月度)4本目)。
さて、こちらの映画です。
結構前から予告がされていたし、ここの特集や予告編が丁寧だし、それを大きく脱線させるような内容はないし、競馬に関しても知らない方でも大丈夫なように配慮されています(いわゆる賭け式がどうだの何だのという、競馬の「ギャンブル」的な要素は基本的に描写はされない)。
実際問題、実話に基づくとしても動物を実際にこの映画で出すと問題になるので、その部分は何らかの配慮があるようです(「動物は傷つけていません」が出ます。おそらくその部分はすべてCG?)。競馬という特殊なジャンルを扱いつつも、何かと問題視されやすいギャンブル依存症を想定するような描写ほか発展する論点はほぼなく、馬が好きというより動物一般が好きという方にもおすすめです。
採点上特に気になる点はないので、フルスコアにしています。
なお、日本との異同に関しては下記に書いておきます。
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(減点なし/参考/いわゆる「一口馬主」について)
映画の中では、あくまでも希望者を募ってお金を出し合って馬を購入し…という趣旨のものなので、日本の民法でいえば「組合」が該当します(日本民法667条)。そして、映画内でも「多数決で決めましょう」といっているように、「民法上の組合」はこれになります。
一方、日本国内でいわゆる「一口馬主」として一部で知られているのは、民法上の組合ではなく、商法の「匿名組合」です(商法535条)。似たようなものですが、
(民法上の組合)
・ 基本的に当事者の多数決で決める(もちろん、投票を放棄することは可能)
(商法上の匿名組合)
・ お金を出して儲けが出たら口数に応じて払い戻しがされるだけ。業務に口出しすることは基本的にできない(商法536条)
★ 商法上の「匿名組合」が「匿名」なのは、こうした一口株主などは、それを扱っている会社などに個人が申し込むだけで、「他に申し込んでいる人が誰か」を知りえないし、基本的に「申し込み先の会社と個々人の(申込人の)清算などで、多数決で決めることがない」(換言すれば、他の方が何口出しただのを知る方法がない)というところに出ます。
…という違いがあります。日本の競馬法(地方競馬も同じ)で「匿名組合」方式しかJRAが認めていないのは、競馬という「公共性の強いもの」に対しては、一般法である民法よりも、商法(実際には一口馬主には、金融法なども適用されます)のほうが(運営の在り方として)適切、という実際上の問題があります。
では、民法上の「組合」はどこに出てくるのか…というと、さて、山梨県在住や山梨県出身の方はいらっしゃるでしょうか…。山梨県特有の文化として「無尽」があります(定期的にお金を出し合って、そのたまったお金で定期的に飲み会に行ったり、時々の「くじ」で何か家電などがプレゼントされるもの)。これは山梨県と、ちょっと趣旨が違いますが、沖縄県特有の文化です。民法上の範囲でいう「組合」に近いのが、これです。
(ほか、職場などでみんなで出し合って宝くじのジャンボを買うだの何だのも、厳密にいえばこれになります)