「唄うこと、踊ること、生きること」発酵する民 kawanomiさんの映画レビュー(感想・評価)
唄うこと、踊ること、生きること
映画『発酵する民』は、「脱原発パレード」でにぎやかに、ほがらかに脱原発のメッセージを掲げて歌い歩いた人々が、鎌倉で「イマジン盆踊り部」を結成し、唄と踊りの輪を広げていく様子が描かれています。
なんといっても彼女たち(登場人物の多くが女性です)が生き生きとしていて動的で圧倒されます。そして、なぜ唄を作るのか、彼女たちはあまり理由を語らないので、見ている方は最初少し当惑するかもしれません。けれど、唄を作り、踊る現場に一緒に“立ち会う”と、じわじわといろんな思いが湧きあがってくるのです。
「イマジン盆踊り部」の彼女たちの信条はゲリラ的であることだそうで、目標やマイルストーンを決めるよりも、大切なものを天塩にかけて作り、じっくり観察し、風向きを見ながら行く先を決めていく。それで、人がつながったり、広がったり、ちょっと前よりいい感じになったり、分岐したりということを楽しんでいます。これってまさに発酵の醍醐味そのもののような気がします。
個人的には、“唄”と“働くこと”が一体となっている生活というのが新鮮で羨ましかった。暮らしの楽しみや発見を唄にすること、お酒を仕込みながらの酒造り唄。映画に登場する人たちは、ブルシット・ジョブから一番遠いところにいる気がします。
これからの時代、どんな風に生きていくのがいいのか、人とどのように関係を結びたいか、模索している人は何かヒントをもらえる映画です。
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