劇場公開日 2021年7月10日

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「局地的な発酵」発酵する民 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0局地的な発酵

2021年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

冒頭、「地球暦」という、変な暦が出てきた時点で、イヤな予感がした。
暦を360度の円環で表現すると、「時の流れが直線的でなくなる」というのはナンセンスとしか思えない。(そもそも各惑星の軌道は、ちゃんと離心率を考慮した、楕円軌道になっているのだろうか?)
幸い、スピリチュアルな作品ではなかったが、ムードやイメージで流れていく奇妙な感覚を味わった。

「発酵盆唄」部というクラブ活動があって、夏になると盆踊りを踊っているらしい。
鎌倉で生活するカフェの経営者、パン屋さん、ジュエリーデザイナーなどを映し出す。
しかし、「脱原発パレード」は、単にクラブ創設のきっかけであって、この映画にはほぼ関係ない。

そもそも題名の“発酵”とは、何を意味しているのであろうか?
「盆踊りクラブ」活動の、どこが“発酵”と呼ぶにふさわしいのか、自分は分からなかった。
人が活動すれば、“発酵”なのか。例えば、こういうことだ。
クラブで踊る人々は、“発酵”しているのか?
居酒屋で騒いでいる連中は、“発酵”しているのか?
そうは言わないはずだ。

“発酵”というサイエンスを扱った映画でもない。
確かにパンや日本酒の製造風景などが映し出されるが、サイエンスとは無関係だ。
「寺田本家」という酒造メーカーが出てくるが、鎌倉ではないようだ。
“発酵”という言葉は、この点でもこじつけに近いように思われる。

メンバーの持っている楽器をみると、太鼓やギターだけでなく、フルートやサックスまであって、“ただ者”ではない音楽集団であることを推測させる。
単なる鎌倉のご近所さんの集団とは思えない、不思議な人々である。

「鎌倉の盆踊りクラブ活動」という、きわめて“局地的な発酵”を追っただけのこの映画は、一体誰に向けて作った映画なのだろうか?
「脱原発」でもないし、“発酵”というサイエンスでもない。“ナチュラリスト”と呼べるほど、自然と一体化している人々でもない。
「盆踊りクラブ」を見て面白いと感じる人ならば、高評価をつけるだろう。
しかし、少なくとも自分にとって、作品の意義が分からない作品だった。

Imperator