パンケーキを毒見する : 特集
シニカルな視点で日本政治を映し出す、かつてない政治バラエティ映画
話題の映画を月会費なしで自宅でいち早く鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」。本日10月28日から31日まで「パンケーキを毒見する」の緊急独占配信がスタートしました。
第99代内閣総理大臣・菅義偉の素顔に迫った政治ドキュメンタリーで、シニカルな視点で日本政治を映し出す、かつてない政治バラエティ映画です。「新聞記者」「i 新聞記者ドキュメント」などの社会派作品を送り出してきたスターサンズの河村光庸氏が企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務めています。
ナレーターに俳優の古館寛治を迎え、政治家や元官僚、ジャーナリストや各界の専門家に話を聞き、菅義偉という人物について、そして菅政権が何を目指したのか、日本がどこへ向かおうとしていたのかを追っています。さらに菅元首相のこれまでの国会答弁を徹底的に検証し、ポーカーフェイスの裏に隠された本心を探っていきます。10月31日に行われる第49回衆議院議員総選挙に備えよ! ということで、投票前に見ておくと、選択のひとつの判断材料になるかもしれない作品ですので、ぜひこの機会にお楽しみください。
「パンケーキを毒見する」(2021年/内山雄人監督/104分/G/日本)
<あらすじ>秋田県のイチゴ農家出身で、上京してダンボール工場で働いたのちに国会議員の秘書となり、横浜市議会議員を経て衆議院議員となった菅義偉氏。世襲議員ではない叩き上げの首相として誕生した菅政権は、携帯料金の値下げ要請など一般受けする政策を行う一方で、学術会議の任命拒否や中小企業改革を断行していくが…。
座談会参加メンバー
駒井尚文(映画.com編集長)、本田敬、今田カミーユ、和田隆
和田 まずは鑑賞した率直な感想からいただけますでしょうか。
駒井編集長 とても面白かったですね。まだ菅さんが首相だった時に試写を見たので、配給も監督もすごい攻めてるなあって驚きました。
和田 「新聞記者」の公開の時もそうでしたが、政変や選挙を想定したようなタイミングで制作、公開してますよね。
本田 邦画もここまできたんだなあ、と思いました。ただ、突っ込みたいところは少しありました。
駒井編集長 「新聞記者」と「i新聞記者ドキュメント」と併せて3部作って感じですかね。
和田 河村プロデューサーはこれまでにあまりなかったスタンスで映画を制作されています。
今田 ストレートなドキュメンタリーではなかったのが面白かったです。あと、普通に昼に仕事や学生してると国会答弁をリアルタイムで見られる人ってそんなに多くないと思うので、あのように映像で検証して見られるのは良い機会だなと思いました。
駒井編集長 国会答弁を映像で検証する、あの法政大学の上西充子先生、凄い面白かったよね。
本田 面白かったですね。
今田 ああいう番組だけ見てみたいくらいです。
和田 なるほど! と思いました。ニュースで流れる国会答弁の映像の見方が変わります。
駒井編集長 共産党も凄く面白かった。赤旗砲は知らなかったなあ。
和田 小池晃書記長の国会での質問には、ちゃんと赤旗新聞記者の裏どりがあったんですね。
駒井編集長 桜を見る会のスクープは赤旗だった! 赤旗購読したくなりましたね。電子版とかあるのかな?
和田 取材する業界は違いますが、ひとりの記者としてこの映画を見ると、メディア、記者の責任は重大だなと改めて痛感しました。政権にすり寄る、もしくは懐に飛び込まないと情報が得られない。でも、そうして得られた情報が真実とは限らない、利用されているかもしれないというジャーナリズムのジレンマ、責任についても描かれています。
本田 ただ壺振りの女の人とか、寝転んだジーンズの外人女性とか、ジェンダー的に違和感感じちゃいました。ちょいレトロな演出がシニア向けなんですかね。
駒井編集長 それは私も思った。やや時代錯誤なシークエンスがね。
和田 狙いとしてなんとかブラックユーモアを混ぜ込もうという姿勢を感じましたし、見ていて笑える作りにもなっています。
本田 もっと女性議員とかに聞いても良かったかもですね。言いたいことをアニメの部分で急に主張するのも、唐突に感じる人と、わかりやすくて面白い、という人とに分かれそう。
駒井編集長 冒頭、いろんな議員に取材依頼して、断られまくるシークエンスがありましたけど、石破茂さんだけ出演してましたね。
今田 石破さん、本音のようなものもぽろっと言ってましたし。
本田 石破さんパートは良かったですね。
駒井編集長 なんかこう、現状の日本の政治の本質を鋭く暴いていて、とても勉強になりました。菅さんの戦略は、「値下げの政治家」で、アクアライン値下げ、NHK値下げ、携帯料金値下げで実績を作った。とても分かりやすい。だけど、その本質は二世でもない、エリートでもないから「博打打ち」で、今回はオリンピック決行の博打に打って出たけど、上手く決まらなかったということですね。
今田 あと、あまり菅さんの私生活の方には触れなかったですね。生い立ちくらいで。集団就職とか、寒村からのたたき上げ像は虚像だったようですが、そこも含めて大衆の心をつかむ何かを持っている人というセルフプロデュース力がある人だったんだなと。
和田 内山監督は特別映像のトークセッションで、菅さんが退陣してからやっと直接会えたと言っています。今回の選挙のための街頭演説の時に。
本田 特別映像に出てましたね。
駒井編集長 特別映像のトークセッションもなかなか面白いですね。「i 新聞記者ドキュメント」の望月衣塑子さんが熱弁振るってて見どころ多い。
和田 ナレーションを担当した古館寛治さんもしっかりと自分の意見を言ってます。
本田 古舘さんはネットでリベラル系の活動をされてますね。
今田 最近は小泉今日子さんとか、SNSを通して政治に言及する俳優さんも増えてきましたね。
和田 小栗旬さん、菅田将暉さん、二階堂ふみさん、橋本環奈さんら俳優もYouTubeに投稿された動画で投票を呼び掛けています。
駒井編集長 政治アイドルの町田彩夏さんも、26歳にして凄くしっかりした意見を持ってます。立派だなあと。
今田 終盤の学生さんたちの場面に救われた気がしました。
駒井編集長 ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領もドキュメンタリー(「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」)で言ってましたけど、若者は投票しに行かなきゃアカンと。
和田 この映画は、菅さん、自民党政権の批判だけに終始せず、メディア(報道)の重要性、国民自身の選択と責任まで言及し、選挙でちゃんと投票しようと呼びかけている作りとなってます。
本田 自民が負けた2回の総選挙はそれぞれ20代の投票率が57%と49%、直近2回は32%と33%(https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/)
駒井編集長 なるほど! 若者は自民党が嫌いってこと?
本田 全年齢で数字が上がってますが。
今田 そもそも30代以下の若者の人口は少ないので、その比率は興味深いですね。
駒井編集長 自民党がってよりは「現状を変えなきゃ」ってモチベーションが政権交代を起こすってことか。
今田 年金問題なども含め、若者が先人のツケを払わされるのは不憫です…。
駒井編集長 結局、政治家のプライオリティーは「次の選挙に当選する」ってことだからね。菅政権が倒れたのも、「次の選挙の顔にならないから」だもんね。
和田 もう一週間早く感染者数が減少していれば菅政権が倒れていなかったかもという、トークセッションでの意見も興味深かったです。
本田 今の減りっぷりは逆に不気味ですよね。
今田 映画公開時(今年7月)よりワクチン接種率もぐんとの伸びましたしね。
駒井編集長 ある意味、菅さんは運が悪かった首相だと思います。コロナがなければ長期になった可能性はある。まあ、コロナがなければ首相にもなっていなかっただろうけど。
本田 就任しての後半は、かなり苦しい答弁が多かったですね、映画でも指摘されてましたが。特別映像はシネマ映画.com独占ですか?
和田 今回の配信期間は独占です。この作品は今年7月30日に劇場公開されてヒットしていますが、今回の総選挙前の緊急配信決定にも注目が集まっています。
本田 選挙前の今是非みてほしい。特別映像と一緒に。そして投票へ!
駒井編集長 個人的には、朝日新聞の記者が話すシークエンスが、一番面白かった。「権力の正体」の話とか、「No.2を重用する」話とか。なるほどって目からウロコいっぱい落ちた。
今田 2時間弱、ファスト映画よりは長いですが、現在の与党と野党のことを学べるので、若い方に見てほしいです。あと、とにかく、ずっとこういう映画を自由に作れて、公開できる国であってほしいです。最近、中国の香港への検閲強化のニュースを見るたびに危機感を感じているので。
和田 そうですね。製作側は政治バラエティ映画とも言っているので、肩の力を抜いて見られるドキュメンタリー映画だと思います。
駒井編集長 かなり笑える作りになってます。政治ドキュメンタリーでは、相当珍しいと思います。