「第99代内閣総理大臣のスカスカ度」パンケーキを毒見する マユキさんの映画レビュー(感想・評価)
第99代内閣総理大臣のスカスカ度
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冒頭、菅義偉首相を中心に集まった「ガネーシャの会」の所属議員たちが、取材を拒否する様が音声で流れる。菅を取材したノンフィクション作家の森功は語る。「安倍のために命を賭けるという官僚はいたが、菅にはそんな官僚はいない。人事権を握っているから恐れはするが、本心ではそんなに怖がっていない。誰もリスペクトなどしていない」と。安倍が「巨大な空洞」なら、菅は「スカスカの石像」のようだ。壊れたレコーダーのように同じ答弁を繰り返す、理念も国家観もない存在。
菅義偉という政治家の権力の源泉がつかみガネ=官房機密費だとすれば、まったく彼に似つかわしい。人徳やビジョンで人を惹きつけられず、カネを使うしかないのだ。ガネーシャとは、現世利益をもたらすヒンドゥー教の神の名だ。横浜市会議員時代から内閣総理大臣に至る現在まで、菅がこだわった「値下げ政策」とは、言わば「愚民政治」のコアだ。バカでも損得がわかるわかりやすいポピュリズム。
柵に囲われた羊の群れが、雪中、一頭また一頭と倒れていくメタファーは痛切だ。「羊の国民は、狼の政府を生む」。
スカスカのパンケーキの如き菅義偉という政治家は、私たちの欲動の投影なのかもしれない。面倒なことは考えたくない、わかりやすい利益が欲しい。そんな願望が、からっぽの権力者を作り出すのだ。
若者の政治参加を支援する学生団体のひとりが言っていた「日本は落ちるところまで落ちる」という言葉。菅のような存在を権力の座につかせてしまう、私たち国民の末路を予感させる。
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