「誰のために死ねるのか?」モンタナの目撃者 Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
誰のために死ねるのか?
二つのオープニング
暗殺者と森林消防隊のハンナそれぞれのオープニングが、雷鳴轟く中で、恐るべき勢いで重なっていった。
少年たちを救えなかった山火事の炎の記憶で始まり、殺人者の企みによる山火事の炎の嵐で幕を閉じたノンストップのサバイバル。
本当にほんの1秒たりとも、スクリーンから目が離せませんでした。
残虐非道!
序盤のガス大爆発には、マジでケツが浮きました。暗殺者のジャックとパトリックは、もし仕事が殺しでなかったら知力・観察力・胆力など経験値の高い優秀な人材。この二人の憎むべき演技があったから、そこから逃れる者のサバイバルや勇気に対して、必死に感情移入してしまった。
彼らは通りがかりの車の女性をためらわず撃ったり、怯える子供や母親の気持ちが揺れるフレーズを投げかけたり、呆れるほどの冷酷無比。
生きる理由と死ねる理由
そしてこの暗殺者のお陰で、結局、誰のためならば命を投げ出せるのかについて、改めて考えさせられることになりました。
斜面を滑落した車の中で、父親が息子を突き放して、脱出を指示した後、自らは暗殺者の銃弾を、背後から山ほど浴びて横死する。
少年も女性隊員のために、姿を見せて後ろを向いた。ほぼ死に直面した切ないシーンばかり。
普通なら有り得ぬような状況を現出して、究極の問いかけが出来るのも、映画の力ですね。
母は死ねない!
妊婦のアリソンがビンを逆さまに握って、ヒットマンの顔を焼いた瞬間、思わず心中で喝采。彼女は、ライフルの扱いも研ぎ澄まされた感じで、明らかな殺意が迫力ありました。命を守るための殺意。
山火事が通過した後、防護マスクをしたまま夫は絶命していた。一瞬、二人とも助かる展開かと思ったから、悲哀感が増しました。
ハンナを含めてアクションにはリアルの迫力があり、皆の外傷が火災の高熱を浴びて、ひりついていた。
アンジェリーナ・ジョリーの鬱血してむくんだ顔と、彼女に泣きながら頷く少年の顔が、しばらく頭から離れそうにないです。