「抜け出せない不幸を考えさせられる映画」前科者 watch_moviesさんの映画レビュー(感想・評価)
抜け出せない不幸を考えさせられる映画
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保護司から見た視点で、刑務所から出所した者の心の更生と葛藤が描き出される。保護司も未熟であり、出所者との関係に翻弄される日常が見え隠れする。登場する前科者のキャラクターにリアリティがあり、物語の世界に引き込まれた。
保護司の住む町で起きた「警官が銃を奪われる事件」をきっかけにして、ある前科者の生い立ちと、その家族の生い立ちが浮き彫りになる。また、その前科者が幼少期に父親から受けたこと、その父親が母親を死なせてしまった過去が見えてくる。前科者が過去に経験した事実が丁寧に描かれていて、その前科者の感情を読み取りやすく、この境遇に置かれた不幸が鮮明に感じ取れた。
また、その家族は警察や役所に救いを求めていたにも関わらず、警官や役所の人達が仕事の手抜きや体裁を繕うだけの扱いでそのことが見過ごされ、結果としてその母親の死に繋がった事情も描かれる。物語であるが妙にリアルである。
この映画は、前科者は「その暗い生い立ちの世界」から抜け出せない葛藤で終わる。劇中の前科者自身もその自覚があり涙したのだと思う。こうした不幸の複雑さは、我々の身の回りに現実にあっても、当事者の周辺の者同士でしか共有されない。作品化されたことで、人々に共有されていくのだろう。
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