「村?」人肉村 Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
村?
「クライモリ」を彷彿とさせるテーマの作品だが、丁度同じ様な時期にそちらがリフレッシュされた内容でリメイクされており、頭の狂った人間をボケーッと見るという上では本作のほうが「クライモリ」感が出るかもしれない。「人肉村」というタイトルで更にそのイメージが強くなるが、内容はと言うと狂人一家に命を狙われる若者のサバイバルを描いたものである。そう、舞台は村ではないのだ。「犬鳴村」等の村シリーズに影響を受けたのだろうか。
本作の設定上、どうしても触れなくてはいけない作品がある。それが「悪魔のいけにえ」だ。トビー・フーパー監督の作品であり、その完成度の高さからルーヴル美術館にそのマスターフィルムが保存されている不朽の名作だ。
本作はどうもファンが作ったのではないかと思う程内容が酷似している。カメラワーク等の雰囲気もどこか似ているように思えてならないが、ここで思ったのが1974年の「悪魔のいけにえ」の完成度の高さだ。短い本編に分かりやすくシンプルにまとめ、そこに巣食う狂気を濃密に描いていた、本当に怖い映画だったと改めて思った。
本作には圧倒的にそれらが不足している様に思える。狂気さは伝わったものの、最も常軌を逸したいわゆる「レザーフェイス」の様なキャラクターを出し惜しみしすぎた印象が強い。三兄弟のキャラクター設定はしっかりと物語に絡めていたが、人肉を喰らうのは三兄弟の中でも最もイカれた存在の末っ子だけだ。上二人はその食料として人間を捕らえていたのである。もちろん異常な一家だが、カニバリズムを真っ向から描いた社会派ホラーの要素ももちろん持っておらず、かと言って最も重きを置くべきである狂気さも至って普通に描かれている。他ホラー作品を観すぎた事による麻痺の可能性もあるが、テンポが良くない為か印象に残るシーンや恐怖を覚えるシーンが少なかったのが残念だった。だが、もし本作が20年以上前に製作された作品だったら、今でも語り継がれる名作の一つになっていたかも知れない。何かそういう匂いのする作品だった。