劇場公開日 2021年10月16日

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〈主婦〉の学校 : 特集

2022年4月22日更新

今どき“主婦”? 男性も歓迎、暮らしと心が豊かになる北欧の家政学校ドキュメント

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話題の映画を月会費なしで自宅でいち早く鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」。本日4月22日から、北欧アイスランドにある男女共学の家政学校を取材したドキュメンタリー「〈主婦〉の学校」の先行独占配信がスタートしました。

かつて、義務教育後に進学の機会が少なかった女性たちを良き主婦に育成する機関だった家政学校。時代の移り変わりとともにその多くが衰退するなか、本作の舞台となった、「The School of Housewives」(主婦の学校)は、1970年代に男女共学となり、性別に関係なく「いまを生きる」ための知恵と技術を求める人々が集まる場に進化しています。映画.com編集部が本作の見どころを語り合いました。

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〈主婦〉の学校
(ステファニア・トルス監督/2020年製作/78分/G/アイスランド)

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<あらすじ>

アイスランドの首都レイキャビクに、1942年に創立された小さな家政学校「The School of Housewives」。学生たちは寮で共同生活を送りながら、生活全般の家事を実践的に学ぶことができる。自立した人生を楽しむための術を学ぶ彼らの姿を通し、暮らしや家事のあり方について柔らかく問いかける。


座談会参加メンバー

駒井尚文編集長(映画.com編集長)、和田隆、荒木理絵、今田カミーユ

■いつの時代にも通用する、生活に密着した“学び”を提供する学校

駒井編集長 「主婦の学校」に入学する前段階から、卒業まで、生徒たちと授業と生活に密着したドキュメンタリー。ものすごく分かりやすい構成の映画でした。

和田 今の時代に必要なサステナブルな学びも多い作品でしたね。

荒木 「不景気になると入校希望者が増える」というのがすごく腑に落ちました。生活力、大事すぎます。

今田 実はタイトルに全く惹かれなかったのですが、見てみたら生徒のみなさんが作った服、料理、そして学校や寮のインテリアが素敵で……。日本にもこういった学校があれば通いたいなと思うほどでした。

荒木 冒頭に「わたし別に主婦になりたいわけじゃないから」っていう女の子も出てきますから、ぜひ先入観無しに見てほしいですね。

駒井編集長 この学校はとてもいいですね。自分で料理をし、裁縫をすることで、レストランの評価とか、洋服の評価とか、色々なスキルが身につきますよね。若い頃の自分に入学をすすめたいと思いました。

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和田 この学校内だけ、なんだか異空間のような、時間の流れがゆるやかに感じましたが、いつの時代にも通じる教えや教訓があるのがすごい。

駒井編集長 寮は、少し修道院みたいな感じもあったかなと。寮もあるけど、通いでもOKみたいですね。

荒木 「生きる技術」をちゃんと学ぶ、ということですもんね。静かに生活と向き合うという、今の時代からしたら、贅沢で貴重な時間です。

■性別や年齢に関係なく、自立し、日常生活を豊かにする技術を身につけられる

今田 デザイナーやシェフなどプロ領域だと未だに男性の割合が高かったりしますし、こういった日常生活を豊かにする技術を教える場には「主婦」や「housewife」という名称がついていたりしますが、そういったことにあまりとらわれずに、人間みんなが学んでほしい内容だと思いました。

荒木 「日常生活を豊かにすること」に男女関係ないですよね。布を織ったり、編み物をしたり、料理をきちんと作ったり。既製品に囲まれて何でもかんでも効率化した世界では見えない世界が見えてきそうです。

駒井編集長 スーツの男性が、「何か逸話を思い出そうとしたけど、特にないんだよ。とても優雅な静けさにつつまれていたよ」と語っていたのが印象的です。映画にも何人か出てきますけど、意外に男性も多いみたいですね。

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荒木 身の回りのことを自分でできるようになる、ゼロから理解できる、ってとても気持ちの良いことだと思うので、性別関係なくやったら楽しいだろうなと思います。世界の解像度がグッと上がるので……。アイロン上手にかけられると楽しい!とか。まぁ、食器を洗うのは食洗器のほうが楽ですけどね(笑)。

和田 要所にインサートされる昔の8ミリフィルム映像が味わい深く、その時代の雰囲気も伝わってきました。当時のファッションも素敵ですね。

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■地域社会への貢献など、家庭の中だけでない広義の学びも

荒木 昔からやっていることが変わらない、生徒たちが楽しそうに学んでいる姿がほほえましかったですね。小さなコミュニティを作ってやりくりして、地域に貢献したりと、家の中だけでない広義の学びがあるなぁと思いました。

駒井編集長 個人的に、一番「おおっ!」ってなったのは、炎に向けて消火器を扱うシークエンスですね。あれ、やってみたい。使ったことないから。

荒木 ああいったことも意外と経験できないことですよね(笑)。忙しい日常の中ではこぼれ落ちるような大事な技術を学んでいるようで、うらやましいです。

今田 世界的に核家族傾向になる以前は、こういった生きる技術が代々年長者の誰かから伝えられていたのでしょうね。

和田 ちなみに、この学校は1970年代に「家政学校」に名称が変更されましたが、以前呼ばれていた「主婦の学校」を監督が敢えて映画のタイトルにしたと公式サイトのインタビューで答えています。

荒木 おばあちゃんから編み物を習う、なんて今の時代ファンタジーに近い気がしてしまいます……。「主婦」という言葉も、時代的にもう違和感のある言葉になりつつあるので、タイトルに使っているのかもしれません。

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■北欧アイスランドの美しい自然と環境、丁寧に調理される料理の数々がとても美味しそう!

駒井編集長 アイスランドには一度だけ行ったことがあるんですけど、この映画見て印象変わりましたね。人々の生活が豊かです。この学校、観光コースに入れるのはアリだと思いました。

和田 ラズベリー摘みに行った山の景色もきれいでしたね。

駒井編集長 絶景はたくさんあるんだけど、美味しい食べ物はあんまりなかったんですよ。食事は単調。サーモンばっかり食べてた記憶しかない。でも、この映画はけっこうバリエーションあった。

今田 ベリーがたくさん乗ったケーキや、魚や卵のオープンサンドなど美味しそうでしたね!

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荒木 たくさん作ったケーキを地域の人たちに売ったり、ホームレスの施設に届けたりしてましたね。ここの生徒たちの料理、食べてみたいですね。すごく手間暇かけてて美味しそう!

駒井編集長 オーガニックな素材を、化学調味料ナシで料理している雰囲気!

今田 ソーセージ風の料理を作っていましたが、内臓をきれいに洗うこととか、すごく手間がかかるんですよね。どのあたりから作業するのかもっと見たかったです。あとは、子豚ですかね? 頭部まで無駄にせずしっかり調理していて、料理って、既に盛り付けられているようなきれいなことだけじゃないよっていうことも見られて良かったです。

■生徒たちの間で芽生える絆 見た後に心も温まる映画

今田 卒業前に、洋服や刺繍などファブリック系の実習成果展を開くのもいいですよね。ここで学んだことで、才能が開花する方もたくさんいそうです。以前取り上げたココ・シャネルのドキュメントを思い出しました。

荒木 自分自身を一つ一つ丁寧に見つめ直す感じが、本当に修道院のようですよね。才能が開花するのもうなずけます。生徒たちの間で芽生えた絆が感じられるラストで、すごく心温まる映画になったと思います。おばあちゃん先生に教わる経験、いいなあ……。

駒井編集長 最初は、あまりに起伏に乏しいので、果たして映画として成立するのかって思ってましたけど、最後はやはり盛り上がりましたね。すごく可愛い映画に仕上がったと思います。

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