「今年一番の衝撃作」ジャッリカットゥ 牛の怒り 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
今年一番の衝撃作
インドのある村で、牛が暴れてめちゃくちゃになるというシンプルなプロットなのだが、とんでもない化け物みたいな傑作だった。世界はでたらめに動いているんだなと強烈に納得させられてしまった。
物語の進行は全く秩序だっていない。牛が暴れる、男たちが狩りに乗り出す、男同士の遺恨があったりして村人同士でもめまくる、牛が穴に落ちたので、なんとかロープで持ち上げる、最後に大勢の男たちが次々に山のように重なり出して、映画は終わる。近代の人間社会の秩序がここにはない。そういう秩序ある社会で生きる私たちの理解の外にある何かが、この物語の中で進行している。むき出しの蛮性と無秩序が映画全編を支配しており、なんというか、人間の原初の形態に近いなにかを見せられたような気分になった。この映画はギリシャ神話みたいなものに近いのだと思う。善悪ではなく、混沌の暴風。
とにかく、今年一番の衝撃作だ。
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