「MCUで女子会」マーベルズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
MCUで女子会
やはり『アベンジャーズ/エンドゲーム』までが最高潮だったのか、徐々にヒーロー映画離れや下火を肌でも感じる。今年に限って言うと…
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は好評だったものの、DCはことごとく撃沈。『ザ・フラッシュ』は個人的には良かったが、興行・批評共に期待外れ。『ブルービートル』に至っては日本未公開…。『アクアマン2』が控えているが…?
さて、MCUは…?
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は賛否、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は好評。配信ドラマシリーズは賛否。変わらず意欲的に作品を発表し続けているが、かつてよりかは精彩に欠ける印象。
そんな中、『キャプテン・マーベル』続編。続編と言っても直接の続きではなく、MCU連作の続き。
あの『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『~エンドゲーム』の絶体絶命の中、救世主となった宇宙最強女子(スーパーヒーロー)、今回もヒーロー映画全ての救世主となるか…?
尺はMCU最短の105分。近年のMCU作品の中でも最も娯楽に徹していた印象。
今回のウリは、3人の女性ヒーローの共闘。…いや、入れ替わり。
キャプテン・マーベル、ミズ・マーベル、キャプテン・ランボーがある現象によりパワーを同時に発動させる事によって、“私たち、入れ替わってる~!?”。
キャプテン・マーベルは説明不要として、
ミズ・マーベル。本名カマラ・カーン。アベンジャーズ・オタクの女子高生で、キャプテン・マーベルの大ファン。祖母から貰った謎の腕輪で光を実体化する能力を持つ。
キャプテン・ランボー。本名モニカ・ランボー。キャプテン・マーベルことキャロルのかつての親友マリアの娘。今はフューリーの下でエージェントとなり、身に付けた超パワーはあらゆるエネルギーを知覚し操作する能力を持つ。
3人の内2人でもパワーを発動させると、平常時でもバトル時でも入れ替わる。入れ替わると言っても身体ではなく、場所。一方が今いる場所から瞬時にこちらへ、もう一方も今いる場所からあちらへ。
本人たちの意思に関係なく交錯するかの如く入れ替わるのだから、もう面倒。特にバトル時なんかは。お願いだからそっちでパワー使わないでよ!
なので自ずと即席チームを組んで共闘。言わずもがなキャプテン・マーベルはチームプレーが苦手で仏頂面。カマラはオタク心丸出し、モニカはキャロルへ確執あり。
3人のやり取りや友情。最初は足並み揃わないが次第に連係していく様はヒーロー映画あるある。入れ替わり訓練シーンは何かきゃぴきゃぴ楽しい女子会みたい。キャロルも普通に女の子してんじゃん。
前作以上にブリー・ラーソンの美貌が映えてたね。彼女はクール担当。
モニカ役のテヨナ・パリス。彼女は真面目担当。
儲け役はカマラ。イマン・ヴェラーニのユーモアとナチュラルさが立っていた。
初期は威厳あったフューリーもすっかりお茶目なキャラに。サミュエルの素かな…? 彼とこれまた愉快なカマラの家族の掛け合いも和気あいあい。
それから、宇宙最強にして最可愛の猫ちゃん、グース。猫ちゃんたちを使っての宇宙基地脱出法はウケたね。
突然ミュージカル。MCU初のミュージカル…!? 会話は全て歌って踊る“ミュージカル惑星”は個人的にツボ。にしてもキャプテン・マーベルが○○してたなんてびっくり!?
以上、楽しさや面白さはあった。…けど、
モニカもカマラも初登場のキャラではない。
モニカは前作にも登場。演者は別だが。彼女が超パワーを身に付けた経緯は『ワンダヴィジョン』で描かれ、その後。
カマラはそのまま『ミズ・マーベル』からの登場。本作、『キャプテン・マーベル』の続編でもあり『ミズ・マーベル』の続編でもあるという。
フューリーについても『シークレット・インベージョン』の後。
つまり本作、MCU映画シリーズより配信ドラマとの関連が濃い。全く分からない事はないけど、ちょっと入り込みにくい。
特に序盤なんか状況や設定やキャラ描写の説明ナシにポンポンポンポン話が進み入れ替わるもんだから、少々置いてきぼり感…。
敵に関しても。今回の敵ダー・ベンはキャプテン・マーベルを“破壊者”と呼び恨みを持つ。序盤、その説明描写はナシ。話が進むにつれ恨みの理由も明らかに。『キャプテン・マーベル』前作と関係あり。見ていく内に思い出したけど、これも初見だときつい。
『キャプテン・マーベル』前作も序盤は「?」「?」だったが展開していく内に繋がっていく面白さあったが、一応今回もそんな感じだが、前作より巧みさには欠けた。
入れ替わりも設定のユニークさだけで結局的に巧く活かし切れず。最後はただ単に共闘アクション。
今回のキーアイテムの“腕輪”と危機。何だか話もとっちらかって忙しく、劇中の台詞を借りるなら“こんがらがってる”印象。
ダー・ベンが持つもう片方の腕輪でキャプテン・マーベルの力を吸収して自分に増幅させる厄介な敵だが、それほど強敵感や脅威は感じられず。
ストーリー面もアクション面もビジュアル面も監督ニア・ダコスタは秀でたものを発揮出来ず。
女性主役で、それぞれ白人、黒人、ムスリム人。敵も有色人種の女性。昨今のディズニーのお馴染みの“アレ”。
つまらなくはなかったけど、これまでの安心安定MCUにしては…。気楽に見れるけど全体的に軽く印象も薄めで、暫くしたら内容忘れちゃいそうな…。
キャプテン・マーベルも今回ばかりは救世主になれなかった…?
ヒーロー映画もこのまま終焉を迎えてしまうのか…?
いや、新生“DCEU”始動。
MCUも来年の『キャプテン・アメリカ』新作に始まり、悪党チームの『サンダーボルツ』、『ブレイド』『ファンタスティック・フォー』のリブート、『アベンジャーズ』新作2部作と強力ラインナップ。他にも多数。
そして今回のポストクレジット。あのヒーロー映画といよいよ…!? ここが一番テンション上がったかも。
今は苦境であっても、ヒーローは窮地を乗り越えるもの。
“マーベルズ”もまた戻ってくる。