「新生」ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
新生
追悼をあんなに前面に押し出していたとは。
うがった見方はせず、チャドはホントに愛されていたんだなと思う事にする。
前国王の死から物語は始まる。
追悼から後継へと話は流れていくのだけれど、リアルな事情を加味すると、現場はどのような空気感だったのだろうかと思う。
作品的にはアクションは少なめだった。
それでも、しっかりと作品に躍動感をもたらすタイミングの良さは流石というべきか。
脇役の見せ場もふんだんにあってドラマに厚みもあった。親衛隊隊長のエピソードなんかは、胸が熱くなる。
CGのクオリティは言わずもがなだし、楽しかった。
だが、どおしてもチャドの影が過ぎる。
作風からして、そこに焦点が当たってるので仕方がない事なのだけど、やはり彼が演じたブラックパンサーが強烈すぎたのだろう。
ラストに前作の彼が映る。
その佇まい、彼へ向けられる目線、信頼感。絶対的な芯を消失した状態であったのだと改めて気づく。
なんかそんなグラつきを作品も内包してたように感じた。
作品自体、彼の死を乗り越えていく話ではあるのだけれど、気構えが足りなかったように思う。どこか、哀しみを拭いきれずにいるような…。
布陣としては総力戦だ。もてる全てを投入して、新たなブラックパンサーを誕生させなければいけない。だけど、この作品におけるチャドはハマり役で当たり役だったと思う。果たして超えられるのか、前国王の死という歴史が必然であったと言い切れるような作品に成長させていけるのか?
それでも、どうにかこうにか落とし前をつけたってとこなのだろうか。
今後は彼女な成長の物語も同時に描かれていくのだろう。というか、母まで殺す事なかったんじななかろうか?彼女の孤独は誰に寄り添えば軽減されるのだろう?アベンジャーズの強烈な個性の集団の中で、彼女が埋もれていかない事を願う。
ワカンダのリズムというか、アフリカの音楽なのだけど、太鼓の音が力強く、心臓の鼓動のように聞こえ、命の強さを感じてた。
偉大なるワカンダの前国王にして、知性と野生と品格まで備えていたブラックパンサーの冥福を祈る。