「井の中の魚 マルチバースを知らず」ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー てらゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
井の中の魚 マルチバースを知らず
俳優が亡くなり、同じく演じていたキャラクターも死んだものとして映画が製作される、、、というのを初めて見ました。
これまでアイアンマンが死のうがブラックウィドウが死のうが、言ってしまえば映画のキャラクターが死んだという演出に過ぎなかったのですが、本作の追悼シーンはかつてないほどに心にくるものがありました。
本当に映画の世界に入り込んだかのように悲しく、映画単体の評価としてメタ的・反則的ではありますが、ここまで感情移入できたのは新鮮でした。
内容に関しても、復讐モノとして非常によくまとまっていたと思います。
世界を燃やし尽くしたいほどに引き裂かれたシュリの心が徹底的に表現されていて、彼女の行く末に目が離せませんでした。
特にキルモンガーが出てきたところは最高です。ハーブの儀式で祖先と対話するという前作の設定を踏襲した上で、想像を180度覆すキルモンガーの登場。でも復讐心に囚われているシュリの前にキルモンガーが現れるのは必然で、前作の設定とキャラを満点に活かした秀逸なシーンだったと思います。
フェーズ4のフィナーレを飾る本作、シュリが復讐を躊躇無くやり遂げてもう世界がシッチャカメッチャカ!なんてこともMCUならばやりかねないかもと思って見てましたが、ラストは無難に落ち着きましたね。
別に本当にシッチャカメッチャカにしてほしかったわけではないですが、終戦の演出がややあっさりしており、あまりにも無難でありがちすぎる展開に終わってしまったのは少し惜しいなと感じました。
また、もう1点惜しいなと感じる部分として、後半ネイモアの魅力不足があります。
空を飛び回って無双して地上全員に喧嘩売ってた時は底知れない怖さがあったのですが、いざ戦い始めると思ったより弱い。。。
勿論単体で見たときの強さは申し分無いんですが、地上全員を敵に回せるほどの軍事力も威圧感も無いので、どうしても井の中の蛙感が否めなかった。
Dr.ストレンジ一人いれば全員封じ込めるんじゃないかと思うぐらいの規模感で、よくこれで地上全員と戦おうと思ったなと。
全宇宙の神とか、インフィニティストーンとか、セレスティアルズとか、神聖時間軸とか、マルチバースとか、特にフェーズ4に入ってからのMCUはもう途方も無い世界観になっていて、この先起きるであろう超常規模の争いはもう想像すら出来ない領域まで来ています。
ネイモアくん、足首パタパタさせてる場合じゃないのよ?
とまあこんな感じでちょっとノリきれない部分もあったのですが
・シュリを中心としたワカンダ国民の心情描写
・キルモンガーやネイモアとの復讐心の対比
・比類なき追悼映画
これらの点が特に素晴らしく、満足の出来映えでした。
アクション要素抑えめ、人間ドラマ深堀りのフェーズ4、MCUファンの需要とはマッチしてないのかもしれませんが、個人的には最高でした。