「シュリの成長物語だが、謎のノイズが……」ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー kouさんの映画レビュー(感想・評価)
シュリの成長物語だが、謎のノイズが……
本作はブラックパンサーの正統な続編。
テーマは、「故人を偲び、想いを受け継ぐ」といった所でしょうか。
シュリの葛藤や成長。伝統の中に自身の気持ちと向き合う事が繋がり、ラストシーンの彼女の涙に全てが込められていると思いました。良き。
ただ、ハーブを勝手に呑んでパンサー継承はどうなの?
って気持ちも若干あります。
また、本作ヴィランであるネイモアも非常に魅力的なキャラクターです。
彼は王であり、神であり、復讐者である。閉鎖的で攻撃的な為、海底資源の簒奪という脅威に対して武力を持って先制を良しとします。
ただ、やはり特徴的なのは民を愛する王であると言うシーンです。タロカンの描写も美しく、そこに生きる民も彼を慕っているのが数カットですが深く分かります。
……ただ、個人的な海底都市の描写としてはアクアマンの方がエフェクトビジュアルともに優っていたような……まぁ、この辺は好みの問題ですが。
また、ワカンダのトンデモ科学マシーンも前作よりパワーアップしている為、アクションシーンは前作以上に格好良いシーンが多かったかと思います。
そんな本作ですが、脚本上、どうしても不可解なノイズとも言える点が3点あります。
・リリの価値
アイアンハートとなるリリですが、授業でヴィブラニウム調査機を発明してしまった為、タロカンに狙われる事になります。
ここで疑問なのがワカンダ人でもない学生の女生徒と、ワカンダとタロカンとの戦争を天秤に掛ける事です。
何故かリリは救われます。理由もなく救われます。
ヒーロー映画だから救われて当然と思うかも知れませんが、どうもバランスが悪く感じます。
とっととアメリカに渡してしまうか、タロカンに渡してしまっても問題ないでしょうに。
・ナキアの行動
シュリ達を海底に助けに来たナキアは、躊躇なくタロカン人を殺します。しかも助けようとしたシュリを止めて、見殺しにします。それが戦争の火種になるってわかるでしょうに……。
そもそも最初のセンター襲撃のフランス系グループは電撃等で殺さず無力化し、捕虜にしていたのだから、外交をするのであれば、先に引き金を引くべきではなかっただろうに……。戦争を起こさせる為の動機として、殺人をするのは如何なものか? そこには不毛なものしかなく、大義のない悲しい戦争となりました。
・ラストシーン
cパート、ナキアが息子を紹介するシーン。
「この子には王の重責は負わせたくない」と語ります。ふむふむなるほど。だからここで暮らしてるし、葬式にも行かなかったんだね。しかしその後、
「名前は?」「ティチャラ王子(原語ではティチャラジュニアかな?)、ティチャラ王の息子」と語ります。
……は? いやいや、ちょっと待てよ。王の重責は負わせたくないのに、王位は主張するの!?
これじゃキルモンガーじゃん! キルモンガーになっちゃうよ!? なんなのナキア、この女。問題しか起こさねぇよこいつ。
しかも、そのせいで、せっかく受け継いたシュリが、まるでツナギのようにも見えてしまう悲しさ。
このラストシーンのせいで、総合80点の映画が65点くらいまで下がりました……。
また、吹替版での視聴だった為、主演の百田夏菜子さんの演技レベルの若干の低さが悪目立ちしてしまいました。そこも残念だったので、字幕で見られた方は正解かと思います。
まぁ、色々書きましたが、
良いシーンも多いです。細かい伏線もあるので、そのシーンが繋がるとかなりの心地よさもあります。
ティチャラ陛下を皆で偲び、次の未来へと足を進める体験が出来たので、劇場で観れて良かったです。
次のアントマンは、もっと気持ち良い作品になってくれ……。
追記
そう言えば「ヒーローになる瞬間」が無い事も、本作の満足度を下げる要因だったと思う。
ブラックパンサーのスーツ
アイアンハートのスーツ
ミッドナイトエンジェルのスーツ
これらの装着シークエンスがない。
アイアンマンで上がるシーンの一つに、スーツ装着シーンがあったはずだ。
せっかくアイアンマンのオマージュを多用しているのであれば、装着シーンも行って欲しかった。
また、主演のブラックパンサーのスーツも、前作のネックレスから全身を覆うシーンが格好良かったし、そのスーツネックレスがキルモンガーに奪われるなどの重要アイテムでもあったはずだ。
そこの魅せ方にも、少し残念な印象だったなぁ。
TIさん、コメントありがとうございます。
追悼として楽しめた自分と、どうしてこうなったと言う自分が4:6くらいの作品だったかと思っています。共感して頂いて、救われました、、、。
面白かったけど何だか消化不良感の否めなかった本作、貴殿の3点のノイズと言うレビューに激しく同意しました。
特に戦争の火種となる部分に関し、アメリカ人少女の命を尊ぶのに対して、女王救出のためとは言えあまりに簡単にタロカン人の命を奪う場面は、とてつもない違和感でした。あれだけのテクノロジーがあるワカンダが麻酔や捕縛・拘束ではなく、いきなり至近距離から致命的な銃撃って。。ナキアが脳筋なのか。。