「ここでジェーンがヒーローに昇格する意味の大きさをじわじわと!!」ソー ラブ&サンダー バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
ここでジェーンがヒーローに昇格する意味の大きさをじわじわと!!
マーベル・シネマティック・ユニバースの最新作にして、「ソー」シリーズ第4弾。今回はシリーズを増すごとに雑な扱いとなっていたジェーン・フォスターが再登場し、原作の通り新たなマイティ・ソーに変身することになるというのが一番大きな着目点である。
しかし、コミックでの経緯を知っている人だったら、それは同時にジェーンが癌に犯されることを意味しているとわかるだけに複雑な心境になるところだが、案の定、そこは原作通りの設定を取り入れている。
ジェーンがマイティ・ソーになっているときは癌の苦しみが軽減される一方で、元に戻ったときの反動が大きく、癌と戦う体力や免疫さえも消費してしまう状況の中で、愛する人のために命をかけて戦うという、ヒーローポジションをジェーンが担うというのは非常に大きな意味がある。
近年のMCUは、ジェンダーレスに拘っていて、同性愛なども緩和されつつあるし、今作においても、『マイティ・ソー バトルロイヤル』では、連想させるシーンが丸々カットになっていた、ヴァルキリーのバイセクシャル設定が普通に盛り込まれている他、ゴーグも同性愛(そもそもそういった概念がない種族なのかもしれないが)が描かれている。
ジェーンはバイセクシャルや同性愛者ではないが、女性とか男性とか関係ない。それこそ国籍や肌の色さえも。誰もがヒーローになることができるという、MCUにおいての新たな概念、メッセージ性を、今までマッチョなヒーローに助けられ、良くてサポートに回るサブ的な存在であったジェーンに託したことで、説得力が増している。
さらにジェーンを演じているナタリー・ポートマンは、ずっと映画業界のマスキュリズム(男性優位主義)と闘い、風穴を開けようと奮闘してきた活動家でもあるだけに、今作でその努力が報われたということだ。完全に今作の主役はジェーンである。
一方、忘れてはいけないのが、2013年に出版されたシリーズ「ソー:ゴッド・オブ・サンダー」で初登場した、割と新しい人気キャラクターのゴア・ザ・ゴッド・ブッチャーを、カメレオン俳優であるクリスチャン・ベールが演じているということだ。思った以上にクリスチャン・ベール色が強く、ビジュアル的な部分としては、少し残念ではあったが……。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』のラストで、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのチームに加わるかたちで地上を離れたソーの、その後すぐが描かれていることもあって、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2.5』といった側面からも観ることができるのは嬉しい限りだ。
とにかく全体を通して、今回はナタリー・ポートマンの映画だ。