「不思議な入れ替わりムービー」消えた時間 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
不思議な入れ替わりムービー
田舎の小学校教師スヒョクの妻ユン・イヨンは母親が憑いたり、お笑いの神が憑いたり、力道山が憑いたり、村人にバレたとしても可愛らしい憑依だった。それでも村人のチョンさんは鉄柵を取りつけ鍵をかけることを提案・・・その日は夫婦二人で閉じこもり、チョンさんが鍵を預かっていた。ところが飲みに出たばかりにスヒョクの家は火事になり、夫婦は焼死・・・
火災の調査にやってきたパク・ヒョング刑事。村人たちは長老の誕生日だということもあり、刑事を歓待して酒を振る舞う。しかし、目が覚めると火災前のスヒョクの家だった。そして皆からは先生と呼ばれている・・・ここで、単純に入れ替わりムービーなのかと単純に考えていたけど、そんなに単純な構造ではなかったし、答えも見えないまま。
悪夢なら恐怖の絶頂から目が覚めるはず!と、教師になったパク・ヒョングは酒がトリガーとなっていると思い、昼間からチョンさんと焼酎を飲み、彼を殴り倒したうえにビニールハウスに火をつける。さすがに殺人を犯せば夢から覚めると思っていたが、焼死体は鹿だった・・・
チョン・ヘギュンのアリバイ。パク・ミギョンと不倫密会。彼女は警察署長の妻だったからヒョングも気になって仕方がない。やがて、彼らの同窓会に無理矢理参加して、色々と尋ねるものの変人扱いされるだけ。何とか元の刑事に戻れるように試行錯誤するも、全て裏目に出るかのよう。妻も息子も心配でしょうがない。
自宅マンションの駐車場での当て逃げしてしまったので自分の携帯の番号をワイパーに挟む。この番号のメモ書きが重要になってくる。教師に変わってから番号に電話しても使われてないとのメッセージ。そして温泉で偶然知り合った編み物教室の女性イ・チョヒが不思議な縁で食事を共にする。「この電話番号は私が2年前まで使ってた番号なのよ」と言われたので、「これは2年前から使い始めた携帯の番号だ」とごまかすヒョング。そして、二人はそのまま教師と妻という形で生活していくのだろうなと思わせる展開でエンディングを迎える。
1回観ただけじゃ分からん。てなことで早送りしながらリピート。「あなたは前世で徳を積んだんじゃなくて悪行を積んだのよ」、「子供を作ろう」というスヒョクとイヨンの会話。
イ・チョヒはいきなり「久しぶり、パク先生」と声をかけるが、ヒョングは編み物教室に通っていたらしい。しかもヒョングは1学期も教職を休んでいた。巨大仏像のシーンでは修復すると原物ではなく昔の趣がなくなってしまうなど、これからの人生を示唆する会話も。
消えた時間という意味深なタイトルはヒョングの刑事だった時間のこと。マンションに戻っても家族はいなし、刑事時代の記憶はあるものの彼の歴史は全て無くなってしまった。時間軸は火災の前に戻ったことからもパラレルワールドではない。全て記憶違いや夢という可能性もある。別人が憑依するという特殊性から考えると、ヒョングに刑事の誰かが憑依したとも考えられる。編み物教室でイ・チョヒがイヨンに教えていたことと、ヒョングにも教えていたことは同じ時間軸にはないのだろう。この点が物語を螺旋階段のように複雑にしている。もしかしたら、このエンディングの後も火災でヒョングとチョヒが亡くなって、誰かがまた代わりを演ずることも考えられるが・・・冒頭と最後にモノクロでのヒョングが描かれているから可能性は高い。
そんなこんなで完全には把握できてないのですが、中に面白い会話があった。イ・チョヒがヒョングに対して「話を作り上げるなんて警察ですか・・・」「話を作るのは小説家」と言ったことや、ヒョングの妻が「刑事が頑張ると冤罪が増える」と、細かいけど、警察に対する批判もあるのが面白い。