「あぶりだされてゆく。」成れの果て はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
あぶりだされてゆく。
レイプ事件の被害者、小夜。加害者、布施野。事もあろうに姉のあすみからその布施野と結婚するつもりだと連絡を受け、動揺と困惑と何もかも破壊してやりたいほどの憎しみを持って8年振りに疎遠になっていた実家へ帰省する小夜。
めちゃくちゃ狭いコミュニティの中で物語が進みます。田畑に囲まれた田舎町。あすみ一人で暮らすには広すぎる家。田舎特有の空気感が相まって更にどんよりした重たい雰囲気に包まれてゆきます。しかも不幸な事に登場人物がみんな自分勝手で胸焼けするほどタチが悪いです。事件を軽視する当事者達。面白おかしく茶化す外野。小夜の乱入でそれぞれの心の奥にある汚いものがあぶりだされてゆきます。醜悪で見るに堪えません。それなのに言葉の力が強くていつの間にか釘付けになっていました。
地味で物静かなあすみが化粧をする刹那。鏡に写し出されるその本性と向き合うのは他でもない自分自身。見事にタイトルが回収されるラストシーンは必見です。
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