「【化粧】」成れの果て ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【化粧】
この作品、もっと注目されても良いように思う。
映画タイトル「成れの果て」の意味は、エンディングで明らかになる。
舞台がベースの物語の映画化と云うことだが、海外を中心に複数の賞を獲得してるだけあって、僕は、人物像…というか、人物の描き方を中心に見応えがある作品だと思った。
人物描写は、どちらかというとデフォルメされた感じで、舞台の良さが踏襲されているようにも思える。
この作品は、事件は題材のひとつであって、実は、事件そのものよりも、それによって明らかになる人の奥底に潜む醜さとか、嫉妬とか、身勝手さとか、そうしたものを考える作品なのではないのか。
(以下ネタバレ)
さて、ストーリーについては、途中、メイキャップ・アーティストの野本が、あすみに対して、化粧をしないで生きていくなんて辛いというようなことを言うのだが、どこか本音…というか、裏の顔をひた隠しにしている登場人物達と、実は、逆説的に重なっていると感じるようになる。
登場人物達が、いつ本音を曝(さらけ)け出すのか、曝け出した時に、人はどうなってしまうのか、或いは、その前には気が付かなかった溢れ出る感情や、奥底に潜む自分自身と向き合って、人はどうなってしまうのか。
ここにデフォルメされた登場人物達は、どこか僕たちに重なるところはないだろうか。
こうした作品では、観る側は、事件そのものをフォーカスしがちだと思うが、レイプも、そして、仮にレイプじゃなくても、人を傷つけることはあるだろう。
そんな時、ちゃんと向き合っているのか。
傍観して、責任逃れなどしていないか。
人の失敗につけ込んだりしていないか。
自分本位で他者を顧みないのではないのか。
嫉妬が募るばかりで、上手くいかないことを他人のせいにしていないか。
想像力の先に考えさせられることは多々あるように思う。
皆んな奥底に潜むどこか醜い自分自身を化粧して隠して生きているのだ。