「人は誰しも過ちを犯す。そして赦してくれる人を待っている。」花椒(ホアジャオ)の味 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
人は誰しも過ちを犯す。そして赦してくれる人を待っている。
父を亡くして、初めて知る二人の妹の存在。その父というのは、理由はどうあれ、自分の子をなした女性を何度も捨てて、結局元の居場所に戻った男。長女が毛嫌いするのも至極当然なのだ。だけど、三人が揃ってからの展開が胸を打つヒューマンドラマ。みんなそれぞれ、背伸びして、きつく当たって、好きに生きてきた。でも、彼女たちはわかっていたと思う、自分が愛されているからこそワガママが言えているんだってことを。愛されていないと絶望していたら、寄り付きもしないだろう。たまに顔を見せることで家族との距離を確かめて安心していたように見えた。悲しいかな、人は、失くしてからその存在の大きさを知る。だから、長女は、何度も何度も父の面影がちらつくのだ。その思い出は、辛い思い出ばかりで痛みを伴うのだけれども、別れの痛みは和らいでいった。そこに、妹二人がいてくれる幸せも感じながら。
そうそう。三人の娘たち、誰が一番愛されていたのか気にしてたね。そこで僕のかつての上司の言葉を思い出した。ある時、二人目の子供の出産を控えた先輩が「今まで一人に向けてた愛情が、これから半分半分になってしまう」と心配していると、「大丈夫だ。今の愛情が100%だとしたら、50%50%になるんじゃなくて、あと100%増えるから」と言った。たぶん、この父の愛情も誰かに偏ったりせず、ちゃんと100%ずつ降り注いていたんだって思えた。それを感じることができた三姉妹の笑顔が眩しかった。
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