「助ける命もあれば助けない命もある」SEOBOK ソボク kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
助ける命もあれば助けない命もある
ハッと目が覚めるようなジジイの台詞。折しも政府が「新型コロナウイルスの入院対象者を重傷者」に絞り込むと発表したばかり。中等症でも酸素吸入が必要な患者もいるのに自宅療養とは事実上医療崩壊を示す発言だった。結局は見殺し・・・その内容が、iPS細胞による不老不死治療をメインとするこの作品と似通っていたことに驚いてしまった。ジジイははっきりとは言わなかったけど、上級国民だけ不老不死にするつもりだったのだろう。
とても興味深い内容だっただけに、先月に観た『Arc』とも比較してしまった。ソボクの方が現実的に考えられるだけに痛々しさも伝わってくるし、犠牲となるソボクに人間的感情が生まれてくるストーリーも優れている。
重力を使ったテレコキネシスといった超能力まで備わっているのだから、全体的には人間ドラマよりももっとアクションに振ってほしかった。途中のロードムービー風展開は若干眠くもなってくるけど、“眠ると死ぬ”んじゃないかと思いふんばりました。個人的には過去の不眠症経験も思い出してしまうほどで、“死ぬこと”は“眠ること”とどう違うのか・・・いや、眠った状態で死ぬことができればいいなぁとか、色々考えさせられる内容でもありました。まぁ“人はいつかは死ぬ”という言葉は嫌いですが・・・やはり“死”があるからこそ人間は精一杯生きているんだと思うようにしたい。
韓国情報院の怖さなんてのも伝わってくるし、醜い不老不死思想も伝わってくる作品。ギホン(コン・ユ)の人間味あふれる元情報局員という設定もいいし、もっと面白くなるはずだったのに、ここが限界か?理解に苦しむのが“母親”であるイム・セウンがどうして生ませたソボクを実験体にしてしまったのか。まるでアトムを作った天馬博士みたい(全然ちゃうけど)。
尚、重力攻撃のシーンは『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』のポップが使う重力魔法「ベタン」を思い出した。