劇場公開日 2021年7月1日

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「老ゲイカップルの別れを切々と!」スーパーノヴァ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5老ゲイカップルの別れを切々と!

2022年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

名優2人の演技を堪能する映画です。
長年(20年)のゲイカップル。
作家のタスカー(スタンリー・トウッチ=実年齢52歳)
パートナーでピアニストのサム(コリン・ファース=実年齢61歳)
2人は大きなキャンピングカーで旅しています。
イギリス北部のハイランドを北上して湖水地方へ。
木立、丘陵の木漏れ日。
湖水へ向かう一本道は、目を見張るほどに美しい。
途中で茶色の中型犬ルビーと散歩に出て、行方不明になるタッカー。
なにか変です。
血相を変えるサムも少し変です。
サムの実家へ寄る。
そこにはタスカーの企画した懐かしい知人たちとのパーティー。
(タスカーはこのパーティーを自らの「お別れの会」と決めているのです。)
(そっとお別れしようと決めているのです。)
しかし、サムはタスカーの決意に気付いてしまいます。
サムの絶望!!悲哀!!

実はこの映画で私が一番に感動したのは、
ラストでピアニストのサムが弾くエルガー作曲の
「愛の挨拶」でした。
本当に美しい演奏(編曲)でした。
(この曲は本来ヴァイオリンの独奏曲です)
ピアノの編曲で聴いたのは初めてですが、サムの万感が込められていた。
きっとサムのタスカーへの想い。
タスカーは崇高な美しさに満ちたかけがえない存在・・・
サムにとってタスカーの代わりはいないのですね。
監督は敢えてタスカーの認知症の進行を具体的には描きませんでした。
(正直言って物足りないです。)

普通に歩ける。
普通に会話出来る。
(皮肉も冗談も言える)

けれど彼の創作ノートを見ました。
細かく精緻に書き込まれていたノートの終わりは、ミミズの這ったようなくねった線・・・
そして千切れたページ。余白・・・。
そのページが痛ましい!
タッカーの絶望感が迫るシーンでした。

サムにとってのスーパーノヴァ(超新星)は、タスカー。
永遠に彼に照らしてほしい。
彼に生きていてほしい!!
彼のいない世界は闇。

この映画は結論ではありません。
2人の人生のロードムービー。
道順を変えながら、立ち止まりながら、
旅を続ける・・・。
行けるところまで、行く・・・。

いつの日か、初めて会ったように、「挨拶」するでしょうか?
誰にも分からないのです。
人生の最後のページは!

琥珀糖