劇場公開日 2021年7月1日

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「【失って悲しいと思うもの】」スーパーノヴァ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0【失って悲しいと思うもの】

2021年7月2日
iPhoneアプリから投稿

上映館は多くないみたいだけど、多くの人に観てほしいと思った。

「失って悲しいと思うものは、良いものということ」

もし、それさえも忘れてしまうのであれば、もっと悲しいだろう。

忘れることも、忘れられることも、怖いし、そして悲しいのだ。

この作品は、こうした状況を巡る、サムとタスカのやり取りが切なく、しかし、とても暖かい。

エンディングでサムが弾く「愛の挨拶」は、エルガーが妻に送った曲だ。

イギリスが舞台の作品であることもあって、エルガーがチョイスされたと思うが、エルガーと妻が、階級(エルガーが庶民)、宗教(カトリックとプロテスタント)、年齢(エルガーが相当年下)を乗り越えて結ばれたことも、サムとタスカに重なるところがあるのだと感じる。

ただ、この作品には、こうしたノン・バイナリーについてあれこれ考えるところは、ほとんどない。

2人の愛し、信頼し合う関係が、あまりにも自然に感じられるからだ。

記憶が無くなっていくというストーリーが、そうさせていると考える人もいると思う。

しかし、僕は、コリン・ファースとスタンリー・トゥッチの演技が、僕達を終始2人の心の揺らぎに釘付けにし、他の考えを寄せ付けないようしているのだと思う。

認知症という物語の背景はありつつも、ジェンダー云々のカテゴリーを超えた、人が人を愛するというところにフォーカスし、葛藤を深く表現した秀作だと思う。

ワンコ