スーパーノヴァのレビュー・感想・評価
全57件中、1~20件目を表示
長きにわたって親交のある名優どうしだからこそ表現できたもの
ぱっと見、このタイトルからSFスペクタクルを想像してしまったが、本作はその真逆にある愛に満ちたヒューマンドラマだった。20年間連れ添ったパートナーどうしが繰り出す旅路。窓を過ぎゆく湖水地方の景色は息を呑むほど美しく、二人が交わす会話もウィットに富み、互いを思い合う温もりに溢れている。初めから不治の病をちらつかせるのではなく、会話の中でごくナチュラルにその要素を浮かび上がらせていく語り口も非常に巧みだ。その上、劇中で語られる”超新星”をめぐる逸話がとても神秘的な印象を刻む。曰く、かつて爆発した星たちがもたらした物質によって人間の体は生成されているのだと。この辺りから本作のタイトルが人の生命を象徴するものであることがわかってくる。そして運命の決断。タスカーは、パートナーの記憶の中で永遠に輝き続けることを選んだのだろう。観る側に様々な賛否を呼び起こす結末だが、その点も含めて深い余韻を残す作品だ。
目新しさはないね
うーん、ゲイカップルってこと以外特筆すべきこともないっていうか、淡々としすぎじゃないかい?作家とピアニストの知的カップルゆえの鼻につく感じはこちらが勝手に思ってることだからまあいいとして、片方が認知症になる老年カップルの話だとアウェイ・フロム・ハーという映画がよかったのよね。こちらはそこまで心にグサッとこなかった。知的カップルが乱れることなく粛々と次のステージに向かってるからかな。悪くはないけど、見なくても後悔のない映画かな、まあ見ないとその結論は出せないのだけど。
納得いかない
母を1人で必死に介護してました。
この彼のように進行がゆっくりであれば本人が色々考えることもできるでしょう。でも人によって進行のスピードは違います。この映画を見て、尊厳死を語るのは早過ぎる。もっともっと認知症について学んでからでなければ、意見を言うのははばかられます。
認知症になっても生きる意欲が強い人もいます。家族は本人がそれを望むなら身体介護はもちろん、心の介護もすることになります。醜態を晒すのが嫌?でも、それも人生です。
はっきり言って映画では全く認知症や介護の大変な部分は映されず、また、本人の意思すら美しいようにまとめられていましたけど、全く同意出来ません。
醜態晒しても、人に迷惑かけても、強い生への執着があることも人間として美しいことだと思います。
どう最後を迎えるか。
とても考えさせられる作品でした。
病気が原因で、日に日に忘れてしまう状況の中最愛の人とどう最後を迎えるか。
相手を思うからこその決断だけど、本当にそれが最良なのか、お互いに辛い最後だと感じました。
ハッピーエンドじゃないけれど、いい作品でした。
片時も離れたくない、絶対に
好きな俳優二人共演という事で楽しみにしていたが、うーん今一つかな?
男二人キャンピングカーに乗って旅行中、イングランドの情緒ある風景が映しだされるが二人の間には重い空気が漂う。段々と二人の置かれている状況が分かってくるが、直接的に話をするわけでは無いのでこちらが推測するだけだが、作家はアルツハイマーの様な進行性認知機能障害に陥り自殺を考えている模様。ピアニストはその恋人を最後まで看取ると決心した所でその事実を知り戸惑う。作家の難しい態度になんだ?だったがそういう病気で気難しくもなる訳だ。それでも温かく見守り理解してくれる家族があり二人の支えとなっていたと思う。
どうしても自分に置き換えて考えてしまうが、自分の愛する人の負担になるなら死を選んでしまうのは分からないでも無い。しかし実際最近身近に40代半ばでその様な道を辿った人がいて、本当にそれは家族が居た堪れない気がした。もうちょっと何か足りない気がした。
20年傍にいたからこその2人の考え
自分が認知症になったら?
パートナーが認知症になったら?
と。
ゆっくりと流れる時間のなかで、
2人の気持ちが痛いほど感じられた。
ラスト、見た人に委ねられた気がするけど、
自分は、やはりサムはまだ乗り越えられてなく、
でも忘れないで欲しいという言葉を
守ってるようにも見えた。
愛することは寂しいこと
最初から最後まで愛に溢れていて、最初から最後までずっと寂しかった。
終始ティッシュが手放せない状態でしたが、ちょっとひねくれてるタスカーが目に涙を浮かべてるところにグッと来たかな。向き合ってお互いの気持ちを吐露し合うところも。
長年連れ添っているだけあって、お互いみなまで言わずともわかってしまう部分も多いだけに、直接話すことでそれが現実味を帯びていくのは少し怖いくらいでした。
ラストをどう読み取るのか……という感じですが、サムがピアノを弾いているのがリサイタルなのかどうか判断がつかない部分や、ラストとは反対にオープニングでの映像、そして「スーパーノヴァ」というタイトルから考えれば、二人が下した決断は理解できるのではないでしょうか。
それも観た人次第だと思いますが……
なぜこのタイトルを付けたのか。
《天文》超新星◆新星(nova)より大規模な激変星。大質量の恒星が一生の最後に一気に収縮して大爆発を起こす<中略>放出されるエネルギーはすさまじく、太陽が一生の間に放出するエネルギーに匹敵するとされる。また超新星爆発によって水素より重い元素が作られ、宇宙に放出される。
発音sùːpərnóuvə、カナ スーパーノウヴァ、分節super・no・va
だそうです。劇中でタスカ―が女の子にお話しするシーン。秀逸です。
冒頭の暗転から、静かなピアノの単音にストリングスが重なり、ほんの小さな白い点が表れる。
その白い点が少しずつ増えていき、天体だと分かる。真ん中にある小さな白い星が少しずつ少しずつ大きくなる。しかしそれは画面全体からすると、とても小さい。気づくか気づかないか。それがゆっくりと周りにある星より大きくなったかなと思ったところで消えてなくなる。
冒頭からここまで、約2分。
スーパーノヴァという言葉が持つ強さからみれば、
とてもとても静かで長い時間をかけたオープニング。
そして、この静かなスーパーノヴァこそがこの映画を
見事に表している。
ストーリーは実に地味。
ゲイのじいさん二人のロードムービー。
しかし、その地味な旅路の会話やしぐさ、エピソードなど
長い年月をかけ培ったであろう2人の絆が
なんとも素晴らしい。さすが名優。
病気を宣告されてから
君に迷惑をかけてまで生きていられない。
僕の看病のためにピアノを手放すなど耐えられない。
それならば僕は喜んで命を捨てる。
いや、
君といつまでもいることこそが僕の生きがい。
君がいない人生など耐えられない。
それならば僕は喜んでピアノの才能を捨てる。
慈愛に満ちた、激しい感情のぶつかりあい。
そしてラスト。
ピアノの演奏曲エルガーの「愛の挨拶」。
いま一緒にいる人を生涯大切にしたいと
とても強く胸に響いた。
静かな良作。
ゆっくりと落ち着いて観られました。
人間関係は複雑ではなくて
実はいたってシンプルだと思う。
無理やり複雑かつ面倒くさくしてるだけだと感じます。
トゥイッチさん、ファースさん
英国俳優さんはカッコいいな。
老ゲイカップルの別れを切々と!
名優2人の演技を堪能する映画です。
長年(20年)のゲイカップル。
作家のタスカー(スタンリー・トウッチ=実年齢52歳)
パートナーでピアニストのサム(コリン・ファース=実年齢61歳)
2人は大きなキャンピングカーで旅しています。
イギリス北部のハイランドを北上して湖水地方へ。
木立、丘陵の木漏れ日。
湖水へ向かう一本道は、目を見張るほどに美しい。
途中で茶色の中型犬ルビーと散歩に出て、行方不明になるタッカー。
なにか変です。
血相を変えるサムも少し変です。
サムの実家へ寄る。
そこにはタスカーの企画した懐かしい知人たちとのパーティー。
(タスカーはこのパーティーを自らの「お別れの会」と決めているのです。)
(そっとお別れしようと決めているのです。)
しかし、サムはタスカーの決意に気付いてしまいます。
サムの絶望!!悲哀!!
実はこの映画で私が一番に感動したのは、
ラストでピアニストのサムが弾くエルガー作曲の
「愛の挨拶」でした。
本当に美しい演奏(編曲)でした。
(この曲は本来ヴァイオリンの独奏曲です)
ピアノの編曲で聴いたのは初めてですが、サムの万感が込められていた。
きっとサムのタスカーへの想い。
タスカーは崇高な美しさに満ちたかけがえない存在・・・
サムにとってタスカーの代わりはいないのですね。
監督は敢えてタスカーの認知症の進行を具体的には描きませんでした。
(正直言って物足りないです。)
普通に歩ける。
普通に会話出来る。
(皮肉も冗談も言える)
けれど彼の創作ノートを見ました。
細かく精緻に書き込まれていたノートの終わりは、ミミズの這ったようなくねった線・・・
そして千切れたページ。余白・・・。
そのページが痛ましい!
タッカーの絶望感が迫るシーンでした。
サムにとってのスーパーノヴァ(超新星)は、タスカー。
永遠に彼に照らしてほしい。
彼に生きていてほしい!!
彼のいない世界は闇。
この映画は結論ではありません。
2人の人生のロードムービー。
道順を変えながら、立ち止まりながら、
旅を続ける・・・。
行けるところまで、行く・・・。
いつの日か、初めて会ったように、「挨拶」するでしょうか?
誰にも分からないのです。
人生の最後のページは!
【”ずっと一緒だ”と彼は言った。人はいつか必ず、地に戻り星になる。けれども、その時に愛した人が傍に居てくれたら、これ以上の幸せは無いと思った作品。観る側に深い余韻を残す、哀しくも美しき作品でもある。】
ー ピアニストのサム(コリン・ファース)と作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)は、ユーモアと文化をこよなく愛する20年来のパートナー。
だが、タスカーが抱えた病が、かけがえのない2人の思い出と、添い遂げるはずの未来を消し去ろうとしていた。
大切な愛のため、それぞれが決めた覚悟とは…。(フライヤーより)ー
◆感想
・フライヤーを読むと、コリン・ファースとスタンリー・トゥッチは、20年来の友だそうである。
ピアニストのサムと作家のタスカーが、キャンピングカーで旅に出た際の社内でのユニークで楽しそうな遣り取りからは実際に友人である事が、何となく伺える。
- 名優二人の最初は楽し気な、そして終盤に向けて哀しみ溢れる様に変化する二人の演技が、素晴らしい。-
・タスカーが抱えた病(認知症)が徐々に進行していく様が、ワンショットで描かれる。
それに気づくサムだが、彼は敢えてそれに触れない。
- サムが社内で見つけた“ペントバルビタール経口液”の瓶。鎮静睡眠剤だが、過剰摂取すると死に至るクスリである。あの量は、充分に致死量を越えている。驚きと悲しみの表情を浮かべるサム。
更に、別のシーンでは、サムは作家のタスカーの草稿を盗み読む。最初は整然と書かれていた文章が徐々に乱れて行き、最後は単語になっている草稿を読んだ時のサムの哀し気な表情。そして、サム、サム、サムと綴られた紙を見つめるサムの表情。ー
・サムの姉の家に寄ったサムとタスカー。サムの姉の家族から歓待され、翌日はサプライズパーティが行われるシーン。
タスカーが書いたスピーチ。彼が病ゆえに読めなくなり、サムが変わって原稿を読む。そこに掛かれていたタスカ―が皆への感謝を伝える言葉。そして、サムへの深い感謝の言葉。
- 外に出て、美しい星空を見上げながらタスカ―がサムの姉の娘に語り掛ける言葉。
”星は死ぬ前に、最も光るんだよ・・”-
<イギリスの湖水地方の美しき風景も趣を与える作品。
ラスト、新居のベッドで寝ているタスカー。階下から聞こえて来るピアノ曲。
階段の手すりを掴みながら降りていくタスカーが見たピアノを奏でる、サムの姿。
木製の机の上にある木箱がクローズアップされる・・。
そして、画は暗転し、盛装したサムがピアノを独り弾くシーンが描かれ、終幕する。
観る側に余韻を残す、哀しくも美しき作品である。>
コリン・ファレルが顔も含め全く違う感じで、さすが役者。二人の過去は...
コリン・ファレルが顔も含め全く違う感じで、さすが役者。二人の過去はほとんど語られないのに、ふたりの濃密な関係は感じさせる。
普通のカップルなら、情況に任せて、あえて言及しないこれからのことについて、二人は真正面から語り合う。ゲイゆえの向き合い方?
残酷な人の運命。
パートナーを襲った予期せぬ病(超新星爆発)が二人の関係に新しい光(超新星=supernova)を灯らせる愛の物語。幾つになっても新しい星は輝くのだ。
①コリン・ファースは『シングルマン』で、パートナーを突然失くした中年のゲイの喪失感・絶望感とそこからの蘇生を見事に演じ上げて見せた。本作では認知症を発症した長年のパートナーに最後まで寄り添いたいと願いつつ本当にやり遂げられるのか自信を持てない葛藤を内に秘めたまま(もしかしたら最後になるかも知れない)二人だけの旅に出た初老のゲイの苦悩をほぼ内面演技だけで表現する。接写(流石に老けてきた。私と同い年だが、やはり西洋人は老けるのが早いのか)が多いが目の表情、顔の表情のみで内面の感情が手に取るように伝わってくる。②スタンリー・トィッチのスターキーも難役だ。いずれ近いうちに自分のことは勿論愛するサムの顔も名前も忘れてしまうことになる恐怖を抱えながら軽口を叩き明るく振る舞う。しかし心の奥では、自分がまだ自分であるうちに、サムに変わり果てた自分を見せる前に、この旅の間に全てを終わりにしようと、命を断つことを密かに考えている。③相手を愛するがゆえにすれ違う二人のやがてくる未来への選択の違い。そして長い付き合いだからこそ二人とも相手の考えは口には出さずとも察している。サムの姉の家でのパーティーの間にスターキーが考えていたことの確たる証拠を見つけてしまったサム。翌日二人は初めてお互いの考え・想い・選択をぶつけ合い大喧嘩する(超新星爆発だ)。④
差別や偏見のない理想の世界、幸せな終末。
主演二人の静かな眼差し、ウィットに富んだ会話、心吸い込まれるような湖水地方の風景、どこまでも広がる星空の中、一瞬の煌めきを放ち消えてゆく星。繊細で静謐な描写に浸る幸せを感じさせてくれる良作です。
最も心打たれるのは、ゲイカップルである主人公達をごくごく自然に受け入れ、包み込み、愛し労る周囲の人々の態度。
サムの姪がタスカーから「スーパーノヴァ」の話を聴く場面では、物語の核心とも言える話の内容はもとより、「叔父の男の恋人」という(少なくとも今の日本では)特殊な存在に懐き、尊敬の念すら抱いているような姪っ子ちゃんの眼差しにやられました。
差別や偏見のない、理想の世界がここにあります。
基本的には異性カップルでも成り立つ愛の物語ですが、「子ども」という未来に繋がる存在が介在しない分、今という刹那を慈しみながら生きる二人の姿が心に沁みます。
サムと周囲の人々の愛に包まれて旅立ったタスカーも、彼との愛を胸に生きてゆくサムも、満ち足りた幸せな人生と言えるでしょう。
独り者としては羨ましい限りですが、コリンのお尻を冒頭で拝めた眼福を反芻しつつ(美しい風景より結局これか 笑)生きていきたいと思います。
性と病、そして死
パートナーのそれぞれの互いへの思いが静かな映画の世界観に染み渡っている。結論は無い。決断しただけ。でも、決断には覚悟が必要。覚悟には揺るぎない思いが必要。強い絆がある故にとても切ない。
自分ならどうするか
終始ドラマって感じで多少の効果音以外は湖水地方の美しい風景と渋い男性俳優2人の演技しかない。
長年連れ添ったパートナーが認知症で徐々に自分自身を失っていくのに直面し、彼からの提案でキャンピングカーで旅に出る。認知症に罹っているのは作家タッカー、そのパートナーのサムはピアニスト。お互いこの旅行に思惑を持っていそうな雰囲気が漂う。夫がアルツハイマー、妻が末期ガンのロードムービー「ロング、ロングバケーション」に少し似てるが、こちらは片方は見送るだけの立場でかつ、同性カップル。同性カップルならではの要素はないが、同性だからこその悲しみが伝わってくる。
最後、薬の入った箱を前に、サムが「ずっと一緒だ」と言ったので、こっちも2人で逝っちゃうのかと思ったが、ラストはピアノのリサイタルで終わったので、その選択は取られなかったのだろう。お姉さんの家であれだけ多くの友人に囲まれたのだから、その選択で良かった。
観た人みんなが、自分がサムなら、タスカーならどうするか、考えさせられる作品。
コリン・ファース、最初に見た「アナザーカントリー」は1985年頃?35年以上前か、美青年だったけど今回は優しいクマさんみたいだった。
全57件中、1~20件目を表示