「体質」決戦は日曜日 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
体質
映画は面白く、日本の選挙がつまらないって事を理解できた。
小市さんが素晴らしい仕事をしてる。
慢性化した選挙の権化みたいな立ち位置で、窪田氏も海千山千のゲテモノ感が凄まじい。
見てくれが凄い頼りなさそうなのだけど、やる事がエグい。ナイスなキャスティングだった。
コメディな事もあって間口は広い。
なのだが、自国の話なのでそうそう笑い飛ばす訳にもいかない。笑い飛ばせない事の方が多いから。
何が民主主義なんだと思う。
…いや、まぁ、民主主義なのだろう。
一部の民衆の為にこの国の政治はある。
崇高な思想も、情熱も無意味なのだ。
「選挙」っていうかなり強固なシステムが蔓延していて、それは辞書に載ってる「選挙」の意味とは全く違う。すっごい馬鹿にされてる。
この映画にしたって、結構な角度で抉ってる。
なのだが、きっと連中は歯牙にも掛けない。劇中にある理論と論理が浸透しきってるし、そういう風に調教もされてきてる。
そんなシステムに気付けて良かった。
どんどんやって欲しい。
ワザと関心をもたないように誘導されているのかもしれない。不確定要素に介入されても面倒なだけなので。彼等にとっては、それが安心安全な選挙と政治であり、安泰で盤石な世界なのだ。
そして、政治の腐敗は選挙の腐敗だと思える。
そして、そんな腐敗を改善する為にも選挙というシステムを利用しなければならないジレンマがある。
そんな仕組みを感じられて良かった。
終幕は濁した感じで歯切れもわるかったのだけど「現状」を的確に表現してたようにも思う。
全くもって、この国の選挙という枠組みは胡散臭い事この上ない。かなり無骨な問題作をかくも呑み込みやすい内容に仕立てた監督の力量を評価したい。
この作品を一過性のモノとしてタカを括ってる連中に一泡吹かせてやりたいと思うが…巨象に立ち向かう蟻のような構図に思えて仕方がない。
だけど、やっぱり観れて良かった。
今まであんまり切り込まれなかった世界だけに、一見の価値はあると思われる。
そして、チグハグな価値観を撒き散らす宮沢さんは、流石の一言だった。
第一声から違和感だらけのキャラを、その違和感さえも纏える資質に脱帽なのである。
今年度の俺的アカデミー主演女優賞を進呈したい。
小市慢太郎さんには助演男優賞を!
ムーブメントが起きるに越した事はないが、広く国民に見てほしい作品だと思う。