劇場公開日 2021年7月9日

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「今年下半期のベスト3には入るかな…。(史実との違いについて、詳細あり。長文)」サムジンカンパニー1995 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0今年下半期のベスト3には入るかな…。(史実との違いについて、詳細あり。長文)

2021年7月11日
PCから投稿

今年77本目(合計141本目)。

PROレビューや他の方が書かれている通り、「韓国版ショムニ」と言えるような内容です。また、実際に起きた環境汚染事件をテーマにしています(一応、「実話をベースにしたフィクションもの」と流れますが)。

また、日本ではいわゆる四大公害病を経験しているため、描き方によっては炎上しかねない部分もありますが、その点は少なめで、「主人公3人がいかに確固たる証拠たる証拠をつきつけて会社の不正を暴露するか」という観点で見ることができ、その点では韓国映画ならではの色々なひねりが入っているので、最後の10分まで飽きないかな…と思います。

日本では現在、まだ放映されている映画館が少ないようですが、多くの方に見てもらえれば…という映画です。

減点対象は下記の0.1のみですが、軽微なものなので5.0まで切り上げています。

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 (減点0.1) 1995年を舞台にした映画なので、当時の韓国のパソコンは、やっとWindows95が入ってきたか、下手をするとWindows3.1っぽい状況です。
その中で、「パソコンの調子が悪いんだけど…」→「デフラグをしたら?」というやり取りがあるのですが、ここは補足説明がないとわからないのでは…と思います。

 ハードディスクをはじめとした記憶媒体は、保存・削除を繰り返す中で、「連続して保存できる部分」が少しずつ減っていきます。デフラグは、その「保存できない破損した部分」を整理・まとめた上で、保存できる領域を向上される技術で、Windows95では普通にありました。

 しかし、ハードディスクに物理的な負担を与えることから、現在(2020~2021)のWindows10ではデフラグは推奨されておらず(実は、裏でこっそり月1で行われているが、何の通知もされない)、「行うことは可能だが、ユーザ責任」で、一般的な操作ではデフラグはできません。このような事情から「デフラグ」という語を知らない方もかなりいるのでは…と思います(説明不足が過ぎる。視聴者全員がSEではない)。
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 (参考/史実との違い)
 この映画は、実際に起きた大邱市の水質汚染事件(フェノール流出事件)をモチーフにしています。「史実を元にしたノンフィクションものです」と流れますが、史実との乖離がかなりあるので、実際に知識を知っていると、混乱します。

 ・ 当時この事件が起きたことは事件だが(1991)、フェノールの垂れ流しというより、広く一般に使われる消毒剤として使われる塩化化合物が、垂れ流しにされていたフェノールと反応したことから、「水質が悪い」というより「悪臭がひどい」という訴えのほうが多かった。

 ・ この事件が起きたのが、(日本でいう)土曜日に起きたため、行政の初動調査が遅れた。

 ・ 住民が大邱市や国を相手取って国賠訴訟を起こしたが敗訴した(水質保全は、個々国民の個別具体的な保証を想定していない(ので、個々人が訴えることはできない)、という原告適格なしの門前払い)。しかし、この事件により、
  ・ 大邱市に限らず、水質汚染が犯罪であるという考え方が韓国に広く普及した
  ・ ミネラルウォーターを随時常備するようになった
  ・ 大邱市に限らず、フェノール等をはじめとする水質チェックが(四大公害病を経験した)日本と同じように厳しくなった
   → このような事件が起きにくくなった

 ・ 国(韓国)は当該企業に行政処分(操業停止処分)を下したが、この当時、韓国は輸出に頼った経済環境で、この企業は韓国を代表する有名企業だったため、操業停止にすると、取引先にある中小企業が巻き添えを食らい、操業に影響することはだれの目に明らかであったため、そうそうに操業停止処分は日数が短縮され、有名無実化してしまった。

 ・ 現在の韓国における環境行政の原点となる事件だった(これを機に、色々な法律が制定された)。
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 (減点なし/他事考慮)
 ・ シネマート心斎橋さん、「電源をオフにしてください」とのことですが、全興連の紹介では「ココアを入れている場合、マナーモードにしたうえでカバンなどに入れてください」であり(電源がオフだとココアが動くわけがない)、説明をちゃんとして欲しいです…(映画館の特別ルールが優先されていると解することは可能だが、ココアを無視することも、当然できない)
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yukispica