ブラックバード 家族が家族であるうちにのレビュー・感想・評価
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すべては、愛ゆえに。
難しい題材。
死を扱うのは。
死んだ後のことを考えて、準備する。
死を選ぶのは自分の決断だけれど、残された人の人生まで決めてしまうのはどうなんだろう?
家族の了解が必要なのだろうか?
自分で、死を選ぶことを認めて欲しいというエゴにはならないのか?
身体が麻痺して、食事が採れなくなり、呼吸もできなくなる。
それがわかってしまったら、自分ならどうする?
自死と安楽死の境目がわからなくなる。
でも。
娘を残しては、死ねない!
そのときまで、覚悟ができるまで、一緒にいたいと思うかなあ~
自然に任せようとおもうかなぁ~
重い題材と裏腹に、景色が美しくて。
こんな場所に家を建てたら、死ぬまで この景色を見ていたいと思うかだろうな。
時代に問いかけるエポックメイキングな作品
夕暮れの空を鳥が飛んでいく。あの鳥は何という鳥だろうか。影になって黒い鳥にしか見えない。何処へ飛んでいくのだろう。リリーの目にはどのように見えていたのだろうか。
本作品は達者な役者陣による会話劇である。シチュエーションがユニークで、家族の誰もがそれを受け入れなければならないが、ひとりひとり人生観が異なる以上、受け止め方も納得の仕方も異なる。その位置エネルギーの差がそのまま正のベクトルとなってストーリーを力強く推し進めていく。
儀礼的な態度や発言は、次第に綻びはじめ、家族はそれぞれに押し殺していた気持ちや人生観がそこかしこで漏れるようになる。ダムの決壊みたいで、最初はチョロチョロとこぼれていたのが、気がつけば激流となって流れ出す。しかしそれらが合流して大きな本流と慣れば流れは落ち着き、ゆったりとした大河になる。
安楽死を決意した母親の気持ちをどのように捉えるかによって立ち位置が決まる。ケイト・ウィンスレットが演じた長女ジェニファーは、本人が決めたのならそれでいいのではないかという立場だ。常識人であり、昔ながらの倫理観の持ち主であるジェニファーだが、母親の破天荒な人格に接して、常識や倫理では測れない人間関係があることを知る。相変わらず素晴らしい演技で、登場人物の考え方を図る基準となっていた。
アナを演じたミア・ワシコウスカは本作品ではじめて見たが、なかなか存在感のある演技で、平穏なはずの家族に風雲を巻き起こす。この人が空気をかき回さなければ最後の大団円はなかった。
安楽死や尊厳死を扱った作品は多いが、大抵は病院のベッドに縛り付けられているか、または在宅医療でやはりベッドに寝たきりの患者である。本作品のように歩ける人を安楽死させるというのは新しい。スーザン・サランドンの名演もあって、アメリカ映画にしては珍しく、時代に問いかけるエポックメイキングな作品だと思う。
自分の人生の決断、関わる家族や友人の決断
その決断の過程ではなく、決断したことを実行する前の週末の話
だから、本人や家族や友人がその決意をどのように考え、どのように決断したのかはわからない
ただ、観ているこちら側には、ある程度、みながその決断を支える決意をしたことがわかる
それほどに穏やかで優しい、でもどこかに緊張と不安が潜んだ時間が流れる
自分の人生という視点からの、妻、母、祖母、義母、友人であるリリー
そうではなく、リリーというひとりの人という視点
視点の違いで、この決断への感情は揺れ動く
目の前で笑って、自分と話しているこの人が、明日の夜には確実にいなくて、もう話をすることはないと言う事実
その事実に向かっていく時間
登場人物たちのその感情の波が、静かに心に響く作品だった
何もできずわからなくなって生き続けるのは嫌だけれど、あれほど周到な準備をすることにも抵抗を感じる。
自分の母親がこのような決断をしたら、ということは考えなかった。母は80代後半で元気でリリーのようなタイプではないからだ。
安楽死を考えるとは生死全般と人間の尊厳を考えることだ。日本は堕胎に緩くピルの使用が一向に広まらない。養子制度も精子バンクを使っての妊娠も、LGBTQの人達の結婚どころか親として子どもを生み育てる仕組みもない。尊厳死・安楽死は認められず死刑制度はある。ちょっと挙げるだけでもこれらについての徹底的な思考と議論が政治レベルは勿論のこと、家庭でも教育の場でもし難い国だ。若い女性の自死がとても多いのも日本だ。差別、格差、貧しさ、弱さ、「異なる」に対する想像力がなさすぎる。とりあえずの権力とお金がある愚かな人間の発言は耳を覆うほど醜悪で無知だ。でもZ世代から40代位までの人達には希望を持っている。
映画の最後の点については、気持ち悪くて嫌だな、が半分。あと半分は昔からそうだったことも織り込み済みで許可(か依頼か)したんだろうが、親友に対して上から目線のような気がした。最初から公にして二人で一人を共有する関係にすればよかったのに。ツェッペリンのTシャツ着て、ウッドストックがなんたらかんたらと言ってたけど、カッコ付きのリベラル。
でも、スーザン・サランドンは好きでいつも安心して見ていられる。ケイト・ウィンスレットは外見も言動も最高に説得力ある長女役だった。メガネ効いてた!ウィンスレットますます好きになりました。
みんなで朝食モリモリのテーブル場面とても好き。
多少わかりにくい点もあるが、今週では1~2番手。
今年61本目(合計127本目)。 ※まだ書いていないのが大量にあるので実質的には70本目くらい。ぼちぼち書いていきます。
いわゆる安楽死をテーマにした映画です。日本ではきわめて特殊なケースで起訴が見送られる程度(医師が、倫理的に許される範囲で行ったもの)で、日本では基本的に、自分1人でやるならまだしも、今回のように家族まで巻き込むと、家族まで事情聴取を食らう内容です。
それだけなら話は簡単なのですが、この家庭には色々隠れた事情があり、話を複雑にしています。もっとも、単純に安楽死を扱う「のみ」では120分近く持ちませんから、そこはひねりを入れても良いかな…と思います。
PG12ですが、多少なりとも不穏当な表現(薬物乱用を惹起させる表現)はありますが、意味のよくわからない「大人の営み」が突然あるようなシーンはなく、PG12の中では比較的穏やかなほうで、日本でも安楽死を認めるか否か、色々議論が交わされているところですが(もっとも、今現在はコロナ事情なのでそれどころではない)、「安楽死の是非」だけでなく「本人の決定権」といった内容も裏に隠れているので、(お話自体は架空のものであるようですが)この1週間迷ったら推せる内容かな…と思います。
ちなみに、タイトル名「ブラックバード」は blackbird(s) で、そのままの意味しかないようです。大英和を引くと「((やや差別的表現)として)黒人」という意味が掲載されていますが、それではないはずです(文化的な伝承の言い伝えなどかなと思って調べたのですが、結局出てきませんでした)。
さて、さっそく評価に入りましょう。下記の通りで、4.7を4.5まで切り下げています。
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(減点0.3) 文法的に無頓着な点が結構目立ちました。ここは残念…。
「私には誇りに思える娘が(2人)いる」という部分が I have two kids that I'm proud of. となっていますが、英文では「前置詞で終わる文は標準英文法からは外れる」扱いです(句動詞などは別)。
この場合、あくまで標準英文法は I have two kids of whom I'm proud. で(関係代名詞thatの前にはいかなる前置詞も置けない。ここでは(人を先行詞にする)目的格の関係代名詞が来るので、whomが正しい(whoでもダメ))、このミスが結構目立ちます。まぁ、意味は理解できるのですが、この語法は標準英文法からは外れており、ちょっと…とは思いました。
(減点0.1) PG12の映画で、上記のように薬物乱用を惹起する内容が出ますが、PG12である故に表現も中途半端になっており、何がどうか微妙にぼかされていて、ちょっと消化不良かな…という気はします。もっとも、あまりに過激に描きすぎるとR15以上になるので仕方なしともいえますが、ちょっとわかりにくいです(楽物乱用、精神疾患などに関する基礎的知識はないと、それ前提の字幕になっているし、それが「単なる安楽死を扱った内容ではない」という「ひねりの部分」にかかってくるので、置いてけぼりにされるところがあります(上記の通り、PG12どまりなので、表現が中途半端。かつ、大人の営みなども出ないので、前提知識(薬物乱用、精神疾患など)がないと、なぜPG12なのかわかりづらいところが結構あります(字幕も巧妙にぼかしている))。
(加点0.1) このストーリー、登場人物は、その家族の一家と関係者くらいで、あわせても10人もいません(俗にいうエキストラとかという人は誰一人登場しない)。そのため、「誰が何かわからない」という類型はおよそ存在せず、「理解のしやすさ」(登場人物が多すぎて混乱する)類型は存在せず、この点は「わかりやすい」という点で(薬物乱用を扱った内容で、その説明が少ない、という指摘とは別)、加点対象にしました。
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死生観と愛の意味を問う作品
安楽死をテーマに纏う“家族の愛“や“真実の愛”
ある程度想像できるストーリー、非常に分かり易いんだけど、後半からまさかのどんでん返しが。
後半の長女ジェニファーの行動には激しく同意、しかし愛とは何かを考えた時にこの展開も、母のリリーの言葉も正解なのかもしれないが、観る人の価値観によって本作の評価は大きく分かれる作品である。この後半の展開には多くの人が嫌悪感を示すんじゃないだろうか(モラルの問題で)。
舞台となる一家が集う素敵なお家はインテリアなども美しく参考になる(こんな大きな家と庭に住みたいわぁ〜)。
安楽死については積極的安楽死はスイスをはじめ、アメリカの一部の州をはじめとする一部の欧米諸国は合法化されており、スペインやニュージーランドも今年から施行される。
出産の“産まれる”事に関しては日時などを決めて計画的に行われる場合もあるのに、“死”に関して計画的行うのは日本は禁じられている。ただもし、自分自身が寝たきりになり話すことも出来ない食べることもできない、そんな状況になれば安楽死を選択するだろう。
改めて難しいテーマであることを再認識した。
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