劇場公開日 2021年6月11日

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「安楽死を決めた人は、知的で冷静で完全に抑制されている」ブラックバード 家族が家族であるうちに CBさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5安楽死を決めた人は、知的で冷静で完全に抑制されている

2021年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「安楽死を決めた人は、知的で冷静で完全に抑制されている」 これは、医師でもある主人公の夫が劇中で言う言葉。その夫は、ALSで弱っていく妻の「安楽死する」という決断を尊重している。妻が望むとおり、最後の3日を家族集まってのパーティや散歩で楽しく過ごそうとしているのだが、それでもその折々に、夫をふと襲う限りない悲しみが、抑えた演技で印象的だった。

上に書いたように、基本的には最後の3日を夫婦と、娘二人とそれぞれの家族たちといっしょに楽しく、あるときは賑やかに、またある時は静かに過ごすというだけの映画。だが、退屈はしない。「安楽死」 という、ひとつの極限状態で、あらためて沸き起こる家族同士の思い。とくに母と娘姉妹の間にあった微かなわだかまり。母が娘たちに日ごろからあけていた言葉、それを娘はどう受け取っていたか。日常を続けていただけでは、きっと言わずに終わった事々が、強制的に期限を切られたことで思わず表面に現れる。それは、観ているこちらにも、普段は考えきれないそうしたことを、思い起こさせてくれる。

そんな映画でした。素敵というか、価値のある映画でした。

CB