「長女への最後のプレゼントが意味深」ブラックバード 家族が家族であるうちに カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
長女への最後のプレゼントが意味深
2014年製作のデンマーク映画「サイレント・ハート」のリメイクで、脚本は変わらず、同じ人。
スーザン・サランドン(母親役)とケイト・ウィンスレット(長女役)。ともにオスカー女優が初共演。
母親のリリーはALS(筋側索硬化症)になってしまって、旦那(サム・ニール)はお医者さんの設定なんだけど、違法な安楽死をリリーは希望して、旦那はみずから手を下すわけではないけど、「ちょっと出掛けていて、戻ってみたら死んでいました」って、お巡りさんに言えば大丈夫、と言う。ばれれば罪に問われ、免許剥奪かもしれない。二人の娘夫婦の家族と古くからの親友を呼んで、最期の週末を過ごして、みんなに看取られて死にたいということらしい。長女は旦那と息子がいて、母親の決断を尊重して、落ち着いて見送ろうとしている様子。次女は離婚歴があって、その原因は彼女が実は同性愛に目覚めたからだったらしく、新しい若い男装のパートナーを連れてきた。リリーは親友のリズに二人の娘をよろしくと頼む。
全員が居間に集まると、妹を除いて、和気あいあいとした雰囲気で、サンクスギビングディにクリスマスパーティーを前倒しして、もみの木を長女の旦那と息子が切りに行ったり、オーナメントを飾ったり、ゲームに興じたり、リリーは皆にひとりづつプレゼントを渡したりするのだが、妹は心から母親の決断を受け入れることができないで、反抗的。姉妹二人だけになると、お互いの小さい頃からのわだかまりや母親に対する異なる感情が噴出してしまう。親子の間や姉妹の間で充分に話す時間がなかったのだろう。その夜中に、長女は父親とリズが抱擁してキスしているのをたまたま目撃してしまう。次の日、姉妹は物置部屋で昔の写真を見ながら、母親との思い出話をするのだが、昔から家族旅行にいつもリズが付いてきていることに長女が気付き、母親はリズに騙され、そそのかされて自殺を考えるようになったのではないかと疑い、頭が一杯になってしまい、妹に一緒に阻止して欲しいと言い出す。
みんなの前で、お母さんはリズに騙されているんじゃないのと言ってしまう。そんなことはないと、母親は落ち着いているが、リズは「あなたたちは家族もいてしあわせだけど、私はずっとひとりだったのよ」と、泣き出してしまう。色白の可愛いお婆ちゃんのリズ(リンゼイ・ダンカン)が初めて感情を吐露する場面。一番、衝撃的だった。リリーはリズが夫のポールをずっと好きだったことを知っていた。二人の結びつきは夫よりもずっと親密で、強いものだったのかもしれない。だから、二人の娘をよろしくと頼む訳だし、夫のこともリズに託したのだと思う。リリーは病気が進んだ時の自分の哀れな姿を誰よりもリズに見られたくなかったのかもとも思う。ポールは感情を露にするようことはほとんどなく、最後に黙って皆を見送るラスト。
リリーの長女へのクリスマスプレゼント(ペン型バイブレーター)は単に場の笑いを取るためのアイテムだけではなく、もしかしたら、でもね~男を当てにして生きていくのはつまらないことよ~レズビアンの妹を見習いなさいといったメッセージが込められていたのかもしれないと思うと、スゴく意味深である。長女の旦那の面目丸潰れとなるようなプレゼントで、かなりお気の毒と思ったけど。
スーザン・サランドンの泰然自若とした演技となんとなくそわそわした落ち着かないケイト・ウィンスレットらしからぬ普通の主婦の演技。安楽死とその一家のちょっとイイ話だけではなくて、かなり毒気に満ちた脚本なのかもね。
カールⅢ世さんへ
あのプレゼントは基本「遺品」なのでママが使ってたと言う事で。特に深い意味は無くて、多分。頭を抱えなければならないのはパパですw
あのプレゼント、そういう意味あり得ますねー!リリーの夫、映画では影薄かったですね。親友にくれてやる、なのかな。ツェッペリンTシャツ着るような親友にはやつれた姿見せたくないと私は思う。リズは私のでなくてリリーの親友だからどうでもいいんですが…。