テーラー 人生の仕立て屋のレビュー・感想・評価
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ものづくり
こういうの好きだわ〜。
高級生地。糸。道具。ボタン。
採寸。チャコールで印をつけて裁断。手際よくミシン掛け。
職人技は見てるだけで楽しい。
ギリシャ映画はなかなか観る機会はない。
セリフは少なめ。
目線だけでいろんな感情が伝わってくる。
女の子が可愛い。
テーラーは日本でもどんどん減っている気がする。
仕立て品は時間も費用もかかる。
本来はそっちが選ばれるべきなのに、選べないような世の中になってしまった。
安くてそこそこの既製品が増えてしまったから。
路上でドレスの仕立てなんて日本では考えられないけど。
職人さんには頑張って欲しいものである。
隣の奥さん?との関係は…なくてもよかったような気がした。
可愛い女の子とのやり取りだけでよかったかな。
【一流の仕立人がスズキのバイクで屋台を引く】
そんな人生が許される世の中に生きていることを思い出させてくれる。
現代日本のガチガチの価値観や固定概念を心地良い力で優しく壊してくれる映画。
物作りが好きな人を癒してくれる、あえてとも思える単調なストリートが良い。
ストリート上心情は理解は出来るが、この映画には不要に思える不倫シーンと、単調なストリートからのラストへ徐々に募る期待感を最後満たしてもらえなかった点が残念なので、星は2.5。
ストレス社会に疲れた時、淡々と進む優しいストーリーに癒されたい、そんな時に観る映画。
寡黙なテーラーの心情が慮れる
寡黙なテーラーであるニコスが何を思ってるのか、寡黙がゆえにわかりにくい。テーラーの仕事に誇りはある、しかし上得意は次々鬼籍にはいり、テーラーとして生きていくのは厳しい時代に、ニコスは起死回生の移動式服屋を始める。
最初は車輪をつけ、そして自転車、バイク、さらにはと、ニコスの移動式服屋は変化していく。そして商品も当初こだわっていた紳士服から、女性もの、そしてウェディングドレスへと需要のあるほうへ変わっていく。
シンプルなストーリーだけどなんせニコスが極めて口数が少ないので、その分、表情や描写によってうかがう場面が多くなるし、そこがこの作品の魅力かなと思う。饒舌じゃない分、味わい深くなる。
そして、確かな技術とセンスをもつということがいかに強いかを感じる。それがあったからこそニコスは新しい商売に漕ぎ出せる。そういう姿は見ていて心地よいし、ギリシャの風景も魅力的で、なかなかによい作品だなと思った。
プロフェッショナル~アテネの老舗テーラー2代目社長の挑戦~
アテネで紳士服の仕立て屋を営む親子。
しかし、ギリシャの債務危機のあおりとファストファッションとバーゲンセールが消費者の目を引く
世界経済の潮流により、そのテーラーは経営破綻寸前に追い込まれる。
そこへ来て父親の方が病で倒れ、本作の主人公である息子は人生最大の窮地に立たされる。
しかし、この社長は本作で2つの大きなイノベーションを起こす。
一つは店舗型から移動式への業態変化である。
キッチンカーならぬテーラーカーの誕生だ。
もう一つは近所のとある母娘との交流と
客からの偶然の注文からインスピレーションを得て、婦人服事業への参入したことである。
最初はカジュアルから攻めてきたが、テーラーとしての確かな腕を消費者に買われ、
今度はウエディングドレス事業へ参入する。
父である先代社長からはその新たなビジネスを「針子の露天商」と蔑んでいたが、
最後は息子の作ったウェディングドレスを「いい出来だ」と評価した場面に少しほっこりした。
そんな一人の青年実業家のある一幕を切り取った本作は
「自分の価値を安く買いたたかれている」より多くの人に勇気を与える作品だろう。
旅立ちまでの一ヶ月
処分するのは亡くなってしまった「お得意様」の型紙。雑踏を歩く父子のハンパない浮き方。父子を店名にしたテーラー。経済的に苦難の道を歩くギリシャにあって、更に取り残される「過去の遺物」としての描写の、さり気なさが好き。
閃いた息子は屋台を引いて街に繰り出し、ひょんな事からウェディング・ドレスを引き受ける事になり、お向かいの人妻の手を借りながら、商売の土俵を切り替えて行く。
自分の型紙を生地に型取りし、テーラーを出て行く父親。
「型紙からスーツを縫い上げるテーラーとして生きて行くのも、他の道に進むのも、お前が自分で決めろ」
父子のテーラーは銀行に差し押さえられるも、シトロエンのバンを屋台に改造して、一人街を出て行く息子。バンの車体には、息子一人の名前がペイントされている。
き。
過去に囚われず、親からの資産を引き継がず、自分の心に従い、ウェディングのテーラーとして独立して行く、と言う話。
少女ビクトリアと言う、リアリティーあるアクセントの使い方とか。人妻との誤ちの件に、深入りし過ぎない脚本とか。欧州文学的です。良い感じで不描写で、画も良く出来てるし。
今年の欧州もの、フランスから来るやつは、悪い意味でグローバル化してフランスらしさが薄れているし、やたらナチスもの&フェミニズムに偏ってるし。そんな中で、ホッと息をつける佳作でした。
良かった。
好きなジャンルだった。
生真面目おじさん 人生の危機から怒涛の大展開(ただし個人レベル)
そうそうヨルゴス・ランティモスみたいなのが出てくるわけないのだけど。
父親との関係、ご近所一家との関係、売れ行きと差押がどうなるか、お客たちとの関係、と軸がいくつもあるけど、結局はあの食卓シーンが1番ハラハラドキドキした。娘のイライラは、ニコを取らないでなのかと思ったら、ママを取らないでなのか。何してたって反則級の可愛さですが。
お客さんも突っ込んだら色々面白く発展しそうな人たちだとは思ったけど、そこに主眼は置かれず。結局はニコの物語。
良いも悪いも
全編を通して、1人の仕立屋のエピソードを流していくのですが、良いも悪いも盛り上がりが無いです。ウェディングドレスを初めて作ってもそんなに感動の物語は無く、隣の奥さんと浮気をしても大騒動にもならず、最後は屋台からトラックに変えて商売を続けていると言う山の無い終わり方。少し残念です。
#75 隣の主婦との関係性
がイマイチわからなかった。
彼女のデザインのおかげでウェディングドレス作りがうまく行ったのに、結局最後はどうゆうこと?
お互い落ち着くところに落ち着いたということか?
子供の気持ちは理解できたけどね。
ギリシャ映画初体験でギリシャの文化がよくわからないからオチも理解できないのかな?
エンディングロールでギリシャ系テニス選手と同じ苗字の人がいないか最後まで頑張って探したけど全くヒットせず。
TsitsipasとかKyrgiosとかKokkinakisとかいう姓は稀なのか。それともギリシャの苗字がバラエティに富んでいるのか?
ほろ苦くもじんわりくる良質の作品
そもそも社会派要素があるという監督作品ですから、宣伝や紹介コラムにある「奇想天外」「極上の感動作」はちょっとピントはずれな気がしますが、深い余韻を残す作品でした。
極端に台詞が少ない中で、主人公ニコスの境遇と周囲をきちんと示し、ニコス役のディミトリス・イメリスの表情と仕草は、キャラクターにピタリとはまっている。見事です。
テーラーの世界だけで生きていたニコスが、店の経営難と父の病という、外からの要因で変わらざるを得なくなる。店を守るために始めた移動式テーラーも最初から上手くいくわけではなく、屋台を引く掌にマメが出来てしまう。
それでも地道に続けているうちに、ウェディングドレスいう意外なオファーを受け、そこからちょっとずつ展望が開けて…となるはずが、最後は大団円とはいかず。
いや、今のニコスなら大丈夫だとは思うけれど、もっと幸せにしてあげたいと切に願ってしまう。
そのくらいニコスが魅力的に見えて来ました。変人かもしれないけれど、正しい人だもの。
ニコス父も良かったなあ。ニコスには厳しいけれど、それは職人としてのプライドがそうさせるものだし、変わることに否定的でもニコスの腕前をきちんと評価してくれる。
近所の主婦オルガとの交流は、寡黙なニコスと母語がロシア語というオルガなので、言葉が少なくても不自然じゃない。上手い設定ですが、国際結婚が多いギリシャだからリアルなんですよね。
一つだけ、驚いたというか意外だったのは、プラトニックで終わると思った二人の仲がそうではなかったということ。
でも、そうだったから次の展開になるわけで、あれもストーリー上必要なのでしょうかね…
ただ、ニコスに懐いていて、商売の手伝いもしてくれた娘のヴィクトリアが、オルガとニコスのことを父に告げたとわかる場面は辛すぎる。
もともとギリシャ好きなので、ギリシャ語を聞きたい、ギリシャの風景を見たいと思って鑑賞しました。細かいところで「ギリシャあるある」な場面があって、それも評価を高くしてしまいます。
字幕が予告編と本編とで異なる場面があり、興味深かったです。(個人的には直訳でも良かったのではと思えた箇所なので)
映画の雰囲気は「寡黙な主人公」という点で、ギリシャっぽくないのですけどね。
いい映画でした。地味で静かな映画ですがとても好きです。
サブタイトルが少し違う
特段人生も仕立ててないし、人生大逆転もしていない。
ただ彼は、誰かの笑顔の為にその人に似合うドレスやリクエストする服を仕立てまくっている。だから映画の途中で「仕立てている!同じだ!」と真剣な眼差しで、愛するお父さんに歯向い、「お葬式に着るスーツ」じゃなくて、必ず皆が笑顔で着るし、届けてあげられる移動式のウエディングドレス専門のテーラーになりました、という純粋で心優しい男の物語だと思いました。
その他、色々と深読みが出来るとても良い映画でした。
チョキチョキと人生を繕う
予告が気になり映画館へ。
語り過ぎない演出と主人公に共感。
生きるってこういうことかも。
歴史ある店を守ることと
一生に一度の誰かの晴れ舞台に
笑顔を届けること、どちらに価値を置けるか。
稼ぎより人が喜ぶことを選択した主人公。
本作のラストは観る人によって
パッピーエンドにもなるしバッドエンドにもなる。
人生を終える瞬間良かったと思えるのは
きっと新しい選択。と個人的には思います。
ウェディングドレスは爆盛で。
主人公の男性が自閉症なのかなぁ?ギリいける感じ?と仕立てよりそっちが気になった。
で、結局、不倫の話しなの?
ヴィクトリアちゃんに癒される
ギリシャのアテネの老舗紳士服店の御曹司(独身)の話し。小さい頃からオーダーメイドの紳士服一筋。景気が悪くなり、借金して、銀行から立派な店を差押えされてしまう。リヤカーを自作して、行商に出るが、さっぱり。お客さんはほとんど女性で、娘が結婚するからウェディングドレスを作って欲しいというリクエストが多い。隣のタクシー運転手の奥さんが洋裁が得意でサポートしてくれる。1ユーロはだいたい125円。200ユーロでシルク生地の多いウェディングドレスを作ってあげる。材料費だけで赤字じゃん。そのかわり、美人の奥さんとねんごろになっちゃう。奥さんの娘のヴィクトリアちゃんとのやり取りに癒される映画。リヤカーをスズキのバイクで引っ張って、奥さんとピレウス港でデート。最期はシトロエンの素敵なボックスカーに変わっていたので、順調に売上を伸ばしたのでしょう。不器用だけど真面目にやってると応援してくれる人が出てくるかもよ。人生捨てたもんじゃないね。っていう映画。ヴィクトリアちゃんがキューピット。鈍いタクシーの運転手さんも友達みたいなもんでした。ヴィクトリアちゃんは夜勤のあるパパに不満をつのらせておりましたが、夜勤のおかげでしっぽりできた奥さんとニコル。南欧の大人のファンタジーですな。
ギリシャの映画賞を複数受賞していて、気になっていたので鑑賞してきた...
ギリシャの映画賞を複数受賞していて、気になっていたので鑑賞してきた。
仕立て屋の二代目として働く男性のお話。
仕立て屋としての需要が少ないようで、借金の返済が厳しい。結局銀行から差し押さえられてしまうのにも関わらず、不幸な話かと言うとそうではなく、どちらかといえば心温まる話だ。
主人公ニコスがウェディングドレスを作り出してから、依頼してくるのは幸せな人ばかりなわけだから、観客が幸福感を得るのは当たり前なのかもしれない。
さらに、ニコスは自分の店をし抑えられたのにも関わらず、ニコスがスーツからウェディングドレスの製作に舵を切った再出発により清々しく終わっている。
この映画では大事件が起きる訳でもない。淡々と物語が進んでいく。それでいて飽きないので不思議な映画だ。
物越しのアングルや小物類のアップがお洒落な映像となっていた。音楽のリズムとミシンの音、足踏みの音をリンクさせるなどの演出がまたオシャレだ。
ニコスはお金を稼げなかったけど仕立て屋としてはプロフェッショナルだ。私はそこに強く共感をした。
【ストーリーざっくり】
主人公ニコスは二代目の仕立て屋。ギリシャ中央に店を構えるも客はやってこない。銀行からはローンの返済を求められている。
ある日父が倒れて入院する。
ニコスは自作のカートを作り、露店を始める。通行人にスーツを来ている人はいない。客が来てもオーダーメイドのため料金が高いことを知ると客の顔は渋る。
ある日、ウェディングドレスを作れないかと客に言われる。最初は断ったが、直ぐに訂正して仕事を受けた。
近所に住むオルガとその子供の協力もあってウェディングドレスを完成させると、客はそのドレスに満足した。
やがて、ニコスは女性服を作ったりウェディングドレスを、作る方にシフトしていく。
ニコスとオルガは良い関係となって、不倫する。子供は二人の関係に気付いたようだ。
オルガの協力もあって衣服は売れ順調に見えていたが、結局ニコスの店は銀行に差押えられてしまう。
ニコスは車に沢山のウェディングドレスを積んで、ウェディングドレス屋として再出発する。
【”艱難辛苦、汝を玉にす。”コツコツと長年掛けて習得した”糸男”の服作りの技術は、どのようなオーダーにもお応え出来ます・・。不思議な味わいの素敵な映画である。】
ー 序盤、台詞が殆どない。
父と営む高級スーツの仕立て店で働くニコスの靴のアップと、トントンと靴をリズミカルに動かしながら、布を裁断し、ミシンで縫うショット。
印象的な幕開けだ。ー
◆感想
・ニコス(ディミトリス・イメロス:初見だが、不器用さ、戸惑い、少しのユーモア、緊張、喜びを微妙な眼の変化で演じている印象深い俳優さんであった。)は、父と共に高級スーツの仕立て店で働くが、店の名に彼の名はない。”息子”とだけ、付け足しのように店名に書かれている。
ー こんな、店名は見たことが無いが、ストーリー展開的に、絶妙な名前である。尚且つ、ニコスが厳格な父親に頭が上がらない事も示している。ー
・ニコスの隣人、タクシー運転手を夫に持つオルガ(タミラ・クリエヴァ:同じく初見だが54歳とは思えぬチャーミングな女優さんである。)と悪戯っ子の娘ヴィクトリアちゃんと、ニコスの関係性の描き方が面白い。毎晩、糸に紙の舟をぶら下げて遣り取りするニコスとヴィクトリア。
ー ニコスが、店に客が来ないので屋台を作り、”移動仕立て屋”を始めるシーン。
最初は全然売れないが、ウエディングドレス製作を請け負ってから、店はドンドン繁盛し、オルガも服作りに協力。
ヴィクトリアちゃんも売り子として、大活躍。
皆、嬉しそうである。ー
・徐々に距離を縮めるニコスとオルガ。
ヴィクトリアちゃんは、女の子らしく微妙な二人の変化を察し、夫も・・。
ー ここで、普通は一波乱あるのだろうが、今作ではそうはならない。
唯、ニコスとオルガは夕暮れの海岸で、ニコスの故郷だという島を見ているのである。
ニコスの言葉
”あの島には、戻れない・・。お葬式しかしないから、スーツしか作れないんだ・・。”
もう、彼はスーツしか作らない仕立て屋さんではないという事を、キチンと示している。ー
・病に臥せっていた父が、息子が”移動仕立て屋”をしている事に対して言った言葉。
”恥ずかしい事をするな””仕立て屋をやっているだけだ!”と初めて父に言い返すニコス。
そして、久しぶりに差し押さえになってしまった自分の店に来た時の父がニコスが仕立てたウエディングドレスに触れ、言った言葉。
ー 父が、ニコスの頑張りを漸く、認めたシーンである。ー
<ラスト、随分と立派になった銀色の移動式仕立て屋が道を誇らしげに走って行く。その側面には、ニコスのフルネームがしっかりと記されている。
少し不思議なトーンの、けれども素敵な映画でありました。>
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