テーラー 人生の仕立て屋のレビュー・感想・評価
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ニコスの恋の行方は
冒頭のシーンでは、仕立て屋のパントマイムなの? と思うくらいセリフがない映像を見せられる。思い切った演出なんだけど、ちょっとウトウトしちゃいました。
ニコスの店の向かいのアパートに住んでいる女の子がニコスとやたらと親しげで、洗濯ロープを使ってニコスとメモのやりとりなんかをしている。この女の子が物語の鍵を握っているんだけど、スネっぷりが超自然で演技がめちゃくちゃ上手い。
ニコスの再出発がメインなストーリーなのかと思っていたら、途中からニコスのウブな恋が始まる。アイコンタクトで恋のやりとりするなんて、見ているこっちもときめいてしまう。しかも、三角関係の修羅場まであるんだよね。修羅場っていっても、表向きは大人の会話で、内心がバチバチしているんだけど、小道具を使った心情表現が上手いねこの監督。セリフ以外で、各自の気持ちがすごく伝わってくる。
ニコスの恋の行方が気になってしょうがなかったけれども、その幕の引き方があるのかって唸りました。
コロナでテレワーク全盛だからこそ、今観たい映画。
今年115本目(合計179本目)。
今週(9月3日の週)は、外国映画祭りなんでしょうか…。「アナザーラウンド」のデンマーク語に始まり、こちらは「ギリシャ語」(ただし、下記参照)。それどころか、ギリシャを舞台にした映画って、それこそ「オリンピックネタ」か「古代ギリシャ文化」くらいの類型でしかみないし、この映画「そのもの」はギリシャでなくても成り立つところ、ギリシャが舞台というのは、結構珍しいなという印象です。
ストーリーはもういたってシンプル。「特集」と予告動画で90%以上わかるので、ネタバレというネタバレが存在しません。一方、他の方も書かれている通り、序盤と終盤にかけて、妙にセリフが少なく、「映像で理解する類型なのかな…」という点は思いました。
翻って日本を観ると、こういうお店は存在しないし(道路を勝手に使ってはいけない、という行政法規があるため)、また、タイトルにも書いた通り、このご時世、テレワーク全盛で、中には24時間監視している会社もあるそうですが、普段ならスーツ着用の会社もテレワークならスーツも何も要求されないので(極論、Tシャツでもポロシャツでも何でも問題にならない)、このご時世で高級服を扱うというのは「現在の日本のご時世」では、どうしても需要が少なくなる点は否めませんが、一方で社会人マナーとして何かあったときにスーツを着るのもまたマナー。今はこのご時世なので忘れがちですが、ギリシャを扱うというかわった設定もあり、今週一押しかな、と思います(9月3日の週では本命の線には入る)。
なお、首都アテネ以外にも、色々な場所を主人公は「移動式テーラー屋」で移動しますが、中には聞いたこともない地名が登場します。この点は公式サイトに「このご時世だからこそ映画内でギリシャ旅行」とか、「映画内に出てくるギリシャの各都市の紹介」というページが別に作られているので、事前に公式ホームページを観るのをお勧めします。
採点は下記が気になったものの、真相がよくわからず、減点対象にするのは好ましくないので、5.0(フルスコア)としています。
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(判断保留/減点なし) この映画、ギリシャがテーマなので、話されている内容は英語ではありません(英語でも何でも、ある程度語学の知識があれば、フランス語か、イタリア語か、スペイン語か…という点はだいたい推測がつくようになる)。おそらく、ギリシャ語ではないか…と思えます。
一方で、この物語の「お手伝いさん」として登場するお子さんが「宿題手伝ってよ」という点は、字幕内では《…》と、別言語(《》でくくられている)を示唆しており、その中では「ギリシャ語は嫌い、動詞の活用が複雑だから」みたいなことを言っています。
すると、複数の言語があることを考えると、反対解釈すれば「ギリシャ語とそれ以外の言語」があることになるのですが、何の言語か不明でした(日本でも、日本語以外にも方言と言えるほどや、沖縄方言など、外国視点では別言語と言えるものもあるので、方言という可能性もある?)。
これらはストーリーの理解や評価には一切関係しませんが(ギリシャ語でも何語でもストーリーには一切関係しない)、妙に気になりました(ギリシャでは現代ギリシャ語が第一言語なようですが、方言のレベルの別言語なのか、まったく違う言語なのか不明。数は少ないながら、ギリシャ語の看板の文字(ギリシャ語なので、αとかβとかγとかが出る)も登場し、すると反対解釈で「もう1つの言語は何?」ということになります。
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【”艱難辛苦、汝を玉にす。”コツコツと長年掛けて習得した”糸男”の服作りの技術は、どのようなオーダーにもお応え出来ます・・。不思議な味わいの素敵な映画である。】
ー 序盤、台詞が殆どない。
父と営む高級スーツの仕立て店で働くニコスの靴のアップと、トントンと靴をリズミカルに動かしながら、布を裁断し、ミシンで縫うショット。
印象的な幕開けだ。ー
◆感想
・ニコス(ディミトリス・イメロス:初見だが、不器用さ、戸惑い、少しのユーモア、緊張、喜びを微妙な眼の変化で演じている印象深い俳優さんであった。)は、父と共に高級スーツの仕立て店で働くが、店の名に彼の名はない。”息子”とだけ、付け足しのように店名に書かれている。
ー こんな、店名は見たことが無いが、ストーリー展開的に、絶妙な名前である。尚且つ、ニコスが厳格な父親に頭が上がらない事も示している。ー
・ニコスの隣人、タクシー運転手を夫に持つオルガ(タミラ・クリエヴァ:同じく初見だが54歳とは思えぬチャーミングな女優さんである。)と悪戯っ子の娘ヴィクトリアちゃんと、ニコスの関係性の描き方が面白い。毎晩、糸に紙の舟をぶら下げて遣り取りするニコスとヴィクトリア。
ー ニコスが、店に客が来ないので屋台を作り、”移動仕立て屋”を始めるシーン。
最初は全然売れないが、ウエディングドレス製作を請け負ってから、店はドンドン繁盛し、オルガも服作りに協力。
ヴィクトリアちゃんも売り子として、大活躍。
皆、嬉しそうである。ー
・徐々に距離を縮めるニコスとオルガ。
ヴィクトリアちゃんは、女の子らしく微妙な二人の変化を察し、夫も・・。
ー ここで、普通は一波乱あるのだろうが、今作ではそうはならない。
唯、ニコスとオルガは夕暮れの海岸で、ニコスの故郷だという島を見ているのである。
ニコスの言葉
”あの島には、戻れない・・。お葬式しかしないから、スーツしか作れないんだ・・。”
もう、彼はスーツしか作らない仕立て屋さんではないという事を、キチンと示している。ー
・病に臥せっていた父が、息子が”移動仕立て屋”をしている事に対して言った言葉。
”恥ずかしい事をするな””仕立て屋をやっているだけだ!”と初めて父に言い返すニコス。
そして、久しぶりに差し押さえになってしまった自分の店に来た時の父がニコスが仕立てたウエディングドレスに触れ、言った言葉。
ー 父が、ニコスの頑張りを漸く、認めたシーンである。ー
<ラスト、随分と立派になった銀色の移動式仕立て屋が道を誇らしげに走って行く。その側面には、ニコスのフルネームがしっかりと記されている。
少し不思議なトーンの、けれども素敵な映画でありました。>
沈黙は語りかけてくれず
無言で目の表情や足の動きがアップになるが、真意を汲み取ることが難しい。
あと、弦楽器の音色が私には不安を掻き立てる音にしか聞こえず、最後まで馴染めませんでした。
何歳になっても一家の長で有り続ける父親とか、国は変われど似たようなものだと共感を覚えるところもあり、駄目な作品なのかと問われれば、そんなことはなくてラストまで色々考えながら観ることができました。
チョイプラス
146本目。
高岡目線、高岡さんに似てるなと相変わらず余計な事を考えながら観てるんだけど、入り方が面白く、この後何が起こるかワクワクする。
でも、そんな作品ではないと思い直す。
所々、センスを感じるんだけど、正直そこ迄の盛り上がりはない。
けど発想は面白かったかな。
プラマイでチョイプラスな感じ。
【ギリシャから、なんか良い話】
ヨーロッパ危機、場合によっては、ギリシャ危機と言われたあたりで、ギリシャが経済的な危機に瀕していた頃に時代設定した物語だ。
今は随分、景気も持ち直して良くなったと思うけど、当時は社会保障費の大幅削減とか本当に大変だったのだと思う。
一部にはアテネ・オリンピックなんか開催して金使い過ぎたとか言われていたけど、リーマンショックなんかの悪影響もあって、イタリアやスペイン、ポルトガル、アイルランドなんかも似たような状況で、豊満財政は本当に国民の利益にならないと思った。
(以下ネタバレ)
店舗を構えた紳士服のテーラーから、発想転換して、移動式テーラー、婦人服の仕立て、そして、最後にウェディングドレスの仕立て屋に展開していく様は、もし事実で有れば、ちょっとしたビジネスのケーススタディとして取り上げられても良さそうな話だ。
日本では、店舗を構えずキッチンカーで営業するお店も多くなってるように思うので、ちょっと似てるかもしれない。
コストは安いし合理的だ。
無口で几帳面、朴訥としたニコの人柄も魅力的に映る。
父親と共同経営で、従属的だったのが、自立して、だんだん表情が自信に満ちていくように見えるのは、僕だけだろうか。
ロンドンで勉強していた頃、同じコースにギリシャ人の富豪の息子がいた。
ゴージャスな雰囲気で、家にはフィリピン人のメイドがいて、部屋も食べ物も与えているので、給料は払わないと言っているのを聞いて、ギリシャは差別主義なのかと腹も立ったが、当時、唯一の楽しみだった読書で、村上春樹さんのギリシャ滞在体験記の「遠い太鼓」は本当に面白くて、いつかギリシャに行ってみたいと、興味の方が、腹立たしさを上回るようになった。
それで、念願かなって、アテネ・オリンピックの少し後ぐらいにギリシャを旅行したが、やっぱり良いところで、日差しがキラキラ眩しくて、でも、リーマンショックを経て、ギリシャ危機が起こって、けっこうショックだったことも思い出す。
なんか、ギリシャ映画って珍しいよね。
切なくて、ユーモアもあって、笑えて、そして、優しさを感じる作品だった。
大人のための味わい深い映画
人の気持ちは常に白黒はっきりつけられる訳ではなく、何もかもを言葉で説明する必要もない。
音も台詞も満載でノイズばかりの映画が多い今日この頃、静かで深みのある映画に出会うと映画のマジックを感じられて幸せ。
ジャック・タチを思わせる主人公も、彼が住むギリシャも、脆さと強さを待ち合わせていてカッコいい。
ほんのり背筋が伸びた
優しくてほんのりさみしい。音と映像で語られるとても良い作品でした。作り手が観客を信頼しており、私たちの日常そのままの、少し足りないような噛み合っていないような物語の流れや結末も、1+1=2ではないその不完全さにほっこりしました。
単純明解な作品も好きですが、こういった作品が見られる環境が失われてほしくないとつくづく思います。
ギリシャの青と真っ赤なSUZUKI バイク
高級スーツの仕立て屋を父と営むニコス。いつも父に敬意を持って、真面目に仕事に取り組んでいたがギリシャ不況の中、銀行からの差し押さえ通知がくる。そんな中、父は病いに倒れより生活は苦しくなる。ニコスは、移動販売を思いつくが、その姿は移動露天商であり、時に人参や魚売り場の隣りで商売がはじまる。得意のスーツの依頼はなく気落ちする中、ウェディングドレス、カラフルな女性服の依頼が入り、オーダー依頼に颯爽と赤のバイク(日本製SUZUKI )にリアカーつけて新しい一歩をふみ出す。
ニコスの隣りに住む優しいオルガと娘ヴィクトリアが素晴らしいアシストをするんですが、人妻なのが残念…でこの辺りから雲行き怪しくなっちゃうし、もっともっとオーダーの素晴らしさ出して欲しかったなぁ。そこが残念!
ただ、テーラーのニコスの佇まいと採寸する手さばきは見ていて職人技って本当に貴重で素晴らしいと感じた。私自身もオーダースーツを作るがいつも採寸、生地選び、ボタン選び、裏地選びと、ひと時優雅な気分になり身体を包み込むピッタリフィットする仕上がりに満足する。また、スーツを作りたくなった映画でした。
台詞がなーい。
ギリシャというエーゲ海の白い街並みを思うけど、庶民の生活はやはり質素。
しかし、父友達は皆お洒落。いつもスーツ着てる。
主人公が無口のせいで、極端に会話が少ない。
静か、足踏みミシンを踏む音、几帳面な親子、真面目に生きてきたんだろうな。
世の中、思い切って全て捨てて、踏み出すほうが旨く行くのかな。
スーツ好き必見!
【堅物で不器用、ひたむきな主人公が愛おしい】
ギリシャの美しい海と青い空の下で織り成す仕立て屋の男が、自分の人生も仕立てていく物語。
ギリシャのアテネで高級スーツの仕立て屋を父と36年間営んできたニコス、不況によって店が差し押さえとなり、さらに父は病に伏せるわで、まさにどん底の状態だった。ある時移動式の本屋をヒントに、手作りの移動式屋台で仕立て屋を始めることに。さらにウェディングドレスを望むお客さんの一言から、これまでに作ったことのないウェディングドレス作りに挑戦することとなる。
ひたむきにチャレンジする50歳のニコス。人生に“遅い”なんて一つもない!いつでもリスタートできるんだよね。
なんといってもドレスやスーツを仕立てるシーンが美しい。滑かな生地のミルフィーユ、彩豊かな糸や華やかなレースが画面いっぱいに溢れだし、まるで宝石箱のようだった。そうか、仕立て屋さんは職人でありアーティストなんだ。職人たちへのオマージュ作品でもある。
なにせ映像が美しい。冒頭のミシンのリズムに合わせて奏でられる音楽、ギリシャの市井の人々の爽やかな笑顔に元気が湧いてくる。
脚本そのものにはモヤモヤする部分が幾つかあったけど、映像が美しかったからまぁいいっか。
糸と布と巻き尺とハサミ✂️
弦楽器の美しい調べ、明るい海と陽光、活気ある町、その中で寡黙だけど目と手と足が表情豊かなニコ。
パジャマの時以外は、いい仕立てのスーツにジレにネクタイ、ポケットチーフはネクタイと揃い、ジャケットを着たらカフスをつけたシャツの袖をきれいに出してズボンの丈も完璧!首に巻き尺だから仕立て屋プロと分かります!屋台も店も完璧に整理整頓されていて掃除も行き届き客商売エチケットとしてキャンディをたまに口に入れる。布にシワを見つけたら手でシワ伸ばし、テーブルが凸凹だと布を裁断して端をミシンで縫ってテーブルクロスをちゃっちゃと作る、糸がほつれたボタンを見ると気になってしまう、腰掛ければミシンを踏むように足が動く。
ガウン姿の時もポケットチーフをしてるようなお洒落で頑固一徹なお父さん。我々は「お針子さん」ではないというプライドがある。そんな父親に鍛えられたアテネ一番の高級紳士服の仕立て屋のニコ。でもニコには父親の世代にはない柔軟さと適応能力と好奇心がある。ドレス世界に対応するセンスとひらめきがある。
ウェディングドレスのオーダーメイド!なんて素敵なんだろう。多分、夏がウェディングシーズンだから屋外できれいに映えるウェディングドレスをみんな注文するのかな。新婦も希望を言う、代金交渉、採寸、仮縫いとプロセスを楽しめるから幸福感も倍増!その嬉しい顔を見るニコは商売としてもプロとしても幸せ💕隣人のオルガ&娘との関係がなんとも言えず可愛らしい。娘とは鏡と灯りで合図、糸のモノレールでメッセージのやりとり。オルガが幸せで楽しく仕事をしているのは彼女の目でわかる。そんなママに焼き餅を焼く娘。二人とも男の人を見る目があります。ニコ役の役者さんの演技は本当に素晴らしかったです。もっと観たい!
ウェディングドレス注文の最初のお客の新婦さん。屋外の結婚パーティー会場で煙草をくわえてた!自由でいい!
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