「恐怖ではなく苦笑を残す、残念な映画体験」リカ 自称28歳の純愛モンスター こひくきさんの映画レビュー(感想・評価)
恐怖ではなく苦笑を残す、残念な映画体験
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ここまで堂々と「駄作」を提示されると、逆に清々しい。ドラマで一度はそれなりに話題になったシリーズを、映画にしてさらにスケールアップさせるつもりだったのでしょうが、完成したのはホラーでもスリラーでもなく、もはや低予算コントの域に達した珍品でした。
最大のみどころは佐々木希の棒読み。感情の起伏がゼロの台詞が延々と続き、観ているこっちが「リハーサルですか?」と首を傾げる始末。確かに無機質さがキャラの狂気を強調していると好意的に解釈する人もいるでしょうが、それは観客の善意に甘えているだけ。本来は演出や脚本が担うべき仕事を、演技の粗が勝手に補完しているのだから笑えます。
さらに酷いのがアクション演出。リカが壁を登る、空を飛ぶ。これを真面目にホラーとして見せられると思った製作陣に心底疑問を抱きます。観客を恐怖で震わせるどころか、暗い劇場でクスクス笑いが漏れていたのがこの映画のすべてを物語っています。ホラーの皮をかぶったコメディ。いや、コメディにすら失礼かもしれない。
結局のところ、これは日本映画界の悪癖の見本です。シリーズで数字が取れたから映画にしてみました、主演は知名度で選びました、キャッチコピーは「自称28歳」で話題性狙い。中身の整合性も恐怖演出も二の次。観客の時間と金をどう浪費するかに腐心した結果、映画史に残る「なぜ作ってしまったのか」案件となりました。
個人的に、この映画は2021年の「何で作っちゃったんだろ映画大賞」を堂々の受賞。怖さゼロ、面白さマイナス、残るのは失笑のみ。観終えた後に残るのは恐怖ではなく、「二度と同じ過ちを繰り返すな」という戒めだけです。
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