「2本立て映画」犬は歌わない Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
2本立て映画
原題は「スペース・ドッグズ」だが、作品は、
・過去の“宇宙犬”の訓練および宇宙飛行に関する、白黒のアーカイブ映像
・現代のモスクワの「野良犬」を映した、カラー映像
の“2本立て”で構成され、宇宙に関係するのは、その片方に過ぎなかった。
それぞれが脈略もなく、入れ替わり立ち替わり出てくる。
「たくましく勇敢な“野良犬”のような犬こそが、“宇宙犬”に向く」というのだが、両者の関連性としてはたったそれだけだ。
「ライカは霊として地球に戻り・・・」なんて宣伝文句にも、全く中身はなかった。
呆れるくらい関連性がないので、「どこが“新感覚のドキュメンタリー”なのか?」と思う。
ただ、面白くなかったかいうと、そうでもなかった。
要は、“2本立て映画”と割り切れば良い。
過去の映像では、もう“動物虐待”としか言いようのない世界が繰り広げられる。
だが、牛豚鶏を常食し、モルモットで科学実験をしている我々に、批判する権利などないだろう。
現代の映像では、野良犬の目線の高さで、野良犬に密着する。野良犬でも、人間に馴れた個体なら、それほど撮影に苦労はないだろう。
かつての日本には、都市部にも居たのかもしれないが、自分はほとんど野良犬は見たことがない。
それだけに、野良犬の世界は、新鮮に目に映った。
自分には、野良犬が“人間そのもの”に見えて仕方がなかった。飼い犬よりは、よっぽど人間に近いのではないか?
時にはジャレ合うが、しかし互いに警戒心は怠らず、これといって助け合うこともない。
半ば必要性から、群れているだけなのだろう。基本的に、あるがままに孤独である。
行動は気まぐれで読めないが、他人が何を考えているか分からないのは、人間も同じだ。
過去の映像または現代の映像の各々では物足りないが、“2本立て映画”として合計で見れば、充実した内容であったし、オリジナリティのある作品だ。