「アメリカ白人の一部はどうして何時までたってもアフリカ系アメリカ人への差別・憎悪を持ち続けるのだろうね。自分達が連れてきたり買ったりしたのに。日本人には理解出来ないアメリカン・ミステリーの一つ。」ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ白人の一部はどうして何時までたってもアフリカ系アメリカ人への差別・憎悪を持ち続けるのだろうね。自分達が連れてきたり買ったりしたのに。日本人には理解出来ないアメリカン・ミステリーの一つ。
①アンドラ・デイがビリー・ホリディが乗り移ったような熱演。②1972年製作のダイアナ・ロスの『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』と観比べてみたいね。③2020年まで「反リンチ法」が上院・下院を通らなかったことは知らなかったので(勉強不足だ)アメリカにおけるアフリカ系アメリカ人への偏見の根深さがわかります。あと、過去の過ちを素直に認められなかっのでしょうね。当事者世代が皆亡くなってやっと認める気になったのでしょうか。④公民権運動が1930年代から始まっていたとはこれも知らなかった(更に勉強不足)。「これは困ったことになった」と“お上”が慌てていたところへ『奇妙な果実』の大ヒットだからね、とにかく歌を封じ込めようと歌手に弾圧のターゲットを絞る考え方は分からないでもないが、『奇妙な果実』は元々ビリー・ホリディのオリジナルではなかったし、歌は「一度世の中に出ると当局がどれだけ禁止しようと歌い次がれていくもの」ということは理解出来なかったのだろうか?まあ、分かっていたけど自由主義を掲げるアメリカでは流石に今の中国やロシアみたいに情報管理・統制できないので歌手を苛めるくらいしか考え付かなかったのでこんな姑息な手に出るしかなかったのだろうな、情けない。死ぬ前にビリーがアンスリンガーに言った「あんたの孫(の世代)が『奇妙な果実』を歌うよ」という台詞は印象的。実際に言ったかどうかは分からないけれど、歴史はその通りになったもんね。⑤白眉は、ツアーの途中で小用?を足しに言ったビリーが、“家を焼かれ、リンチされた末に首を括られて木から吊るされたその家の主婦とそれを降ろそうとしている父親に「早くママを下ろして上げて!」と泣き叫ぶ少女たち(自分の母親があんな目にあったらどう思うかと考えれば胸が張り裂けそう)の光景を見てショックを受けて狂乱・錯乱したあと、劇中で始めて『奇妙な果実』をフルコーラスで歌う”までの長いワンショットで撮ったようなシーン。ここを観るだけでもこの映画を観る価値はあると思う。⑥惜しむらくは、アフリカンアメリカンへの差別・偏見・虐待の問題と、アルコール依存症・麻薬依存症に関する問題(そもそもこの映画は「Chasing the Scream (麻薬と人間100年)」という本が元ネタ)とがビリー・ホリディの人生を描くなかで上手く融合出来ていなくて視点が分散されてしまっていること(それで映画の印象が散漫なものになってしまっている)。それでも、アンドラ・デイの熱演を讃えて⭐一つオマケします。⑦タルーラ・バンクヘッド役の女優があまり似ていないのとタルーラの個性を上手く表現出来ていないのも物足りない。⑧フレッチャー役の役者は『ムーンライト』の男の子(成人した後)だったんですねェ。⑨歌としては「Lover Man」を入れてくれたのは嬉しかったが、個人的には「Crazy He Calls Me」も歌って欲しかったな。