劇場公開日 2022年2月11日

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「尻を叩くでない」ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0尻を叩くでない

2022年2月17日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

40年代、黒人への差別・リンチが蔓延る世の中でジャズ・シンガーとして活躍していたビリー・ホリデイが「奇妙な果実」の歌が原因で麻薬局からターゲットにされる話。

ラストのメッセージにある反リンチ法案についてあるようにめちゃめちゃ現代に繋がる政治的メッセージを持って作られてる映画で、麻薬局長官のアンスリンガーに関しては実際の映像が太ったハゲおじがケネディ元大統領の前で満面の笑みという極悪人にしか見えないような作りで笑ってしまった。

でもアメリカが麻薬撲滅の名目で黒人を圧迫しているのはおそらく現在進行形の話でもあって、黒人の人達が警察官に殺される問題ってここに繋がると思う。日本人の感覚だと麻薬に溺れる方も悪いってなりそうだけど、アメリカの場合絶対他の白人の人もやってる。なのに黒人の逮捕率が高い事実を考えると、ビリー・ホリデイが狙われてたのも納得。

あとはビリー・ホリデイが麻薬に溺れてしまうのも、過去のトラウマがあってさらに、高圧的な男ばっかりに囲まれて良いように利用され暴力も振るわれてるのに、何事も無かったかのように旦那と普通に接してるのを見ると本当に麻薬しか逃げ道がなかったのだなと思い悲しい。

おそらく麻薬捜査官のジミー・フレッチャーとの関係はフィクションだと思うので、あんな風に優しい男性が誰かいれば何かが違ったのかもと思った。それが「尻を叩く」という行為で反復されててよかった。

アンスリンガーがビリー・ホリデイをアメリカらしくないって批判してたけど、日本人の私からしたら常に色んな疑問と闘争が起きているようなところこそアメリカだと思っているから、その悪い所をもみ消そうとする行為がめっちゃ日本人ぽいなと思った。

せつこん