劇場公開日 2022年1月21日

「難解だけど… 「それを良しとしてあげる」」真夜中乙女戦争 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5難解だけど… 「それを良しとしてあげる」

2024年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

難しい

漫画の実写化かと思ったが、小説の実写化のようだ。
この作品には視聴者の絶対叶えることのできない欲求が描かれている。
面白いのは、腐ったシステムに加担する人々を東京ごとリセットするという発想にまでなってしまった「常連」たちのフラストレーションを主人公と黒服が作っておきながら、好きな人ができたことで主人公「私」の行動が「戦争」には向かなくなったことと、その表現だ。
「私」は先輩を必死で守りたいと思った。先輩も「私」を好きだと言ってくれた。でも、やっぱり別の本命がいた。
「私」は、おそらくそれでもいいと思った。おそらく、もう一度誰かを好きになることができた自分に、人間らしい不思議な温かさを感じていたに違いない。
主人公が初めて手をつないだ人は、どこかで起きた地震で建物がつぶれ圧死した。
これが主人公が無気力になった理由。無気力だということさえも気づいていないかのようにぼうっと漂っている。
世間一般がするように、他人にそれを求めるように、表面上の数字、わかるように話せという相対価値… それを大学教授にぶつけると、コーヒーを引っ掛けられた。
求める方は偉そうに毎回それを求めるが、立場が逆転するとなぜ怒る? この理不尽さ。皆そんなことを日常的に感じていると思う。
先輩が言った「寂しそうで、正しくあろうとして、半信半疑で、でも何もあきらめてない」 ただ知りたかっただけだ。でもそれは、黒服が言ったように「誰も教えてくれない」ことだ。
大学内で発生している連続放火事件。
理解できなかったのは、
主人公が黒服と出会った時に落とした「茎わかめ」、それに反応した黒服。単なる出会いの記憶の種なのか? 主人公が黒服に「茎わかめもお前の仕業だったのか」のようなことを聞くが、その意味が不明だ。誰か教えてください。
さて、
主人公は黒服が出火の原因を作るところを目撃するが、とっさに彼を助けた「衝動」は、主人公も黒服と同じように世間に対して「復讐」を考えていたからだろう。
二人が出会ったことでいたずらはエスカレートして、社会問題化する。
同時に学内でチラシをまいて映画鑑賞のサークルのようなことをし始めると、満たされない思いを持つ人々が集まり、そこに年齢という枠が取れ、「何のために生きているのかわからない」衝動が膨れ上がる。
常連はそのような自分たちを乙女と呼び、腐ったシステムに加担するすべての人々に対し戦争を仕掛ける。
そしてクリスマスに東京を破壊する計画を立てる。
映画の公開は2022年 コロナ化のフラストレーション。
マイノリティを感じている人々の心の行き場を東京をリセットするという行動で補おうとする思考は、かなり多くの人々が抱いているのではないかと感じた。この映画はその代行執行だ。
しかし作品の意図はそこにはなく、主人公の心の揺らぎを描いている。
主人公にとって黒服は自分の分身だ。彼の心の中心にある黒さだ。
そして常連は個々の出来事に対する主人公の不満でありその象徴だ。いたずらという行為をすることで復讐の感覚が膨らみ続けるのだ。
彼の考えに従っていたずらを始め、それは楽しくて仕方がなかった。
似たように黒さを持つ常連たちといたずらを始めながら、やがてそれは戦争を計画する。
主人公は先輩を好きになる。
無気力を作った彼女の圧死から、新しく誰かを好きになったことで黒服らの行動の異常さに気づく。
先輩を連れてレストランを飛び出した後、常連に確保され笑いのネタにされ殴られるが、先輩の痕跡を探し当て、バーにたどり着く。
黒服の計画を阻止するためにアジトに行く。
主人公が黒服にキスをしたのは、黒い思考を持った自分自身への赦しだ。自分への愛だ。
それを愛し、刺し殺した。
黒服がそれを予知していたのは、それが自分だからだろう。「お前の勝利だ」としながらも、爆破は防げない。
おそらく爆破執行行為はすでに視聴者に渡されているのだ。
東京タワーのエレベーターの中から主人公に電話した先輩は、まだ何が起きているのか知らない。エレベーターのドアが開くと主人公の話していたことが事実だと知る。
内定どころかその会社も、東京も爆破されている。
「僕が先輩の本命じゃなかったこと、一生許せない」これは爆破とは関係ない。主人公の本音だ。そこに先輩が言った「自分を演じる」ことはしない。
そして先輩は「誰もが君を許さない。死ねばいいと思う。本当に最低」と自分を演じることはしないながらも「生きているなら、今はそれでよしとしてあげる」と本音をいう。
彼女は主人公が計画に加担していたことを知っている。主人公がそれを止めに行ったことも知っているだろう。この光景を見た瞬間、彼女は自分を演じる癖を終わらせたのだ。
彼女は恋愛について主人公に「もしも毎回山手線みたいに同じことの繰り返しだったらどうする?」と聞く。
変わらない世界 変えたくても変えられない世界 同じことを繰り返す世界 同じことしか繰り返せない自分 そして何より「ある自分」を演じている自分…
この物語は、多数の考えが存在する「私」を一つの世界に広げたものかもしれない。
すべてを壊してしまいたい私 その奥底にある正しくあろうとしたい私 何もかもわからないことばかりでも「何もあきらめてなどいない」私
自分自身の中に、そんな「私」がいるということを視聴者自身に気づいてほしいのかなと思った。
妄想でしかないが、考えることのできる作品だった。
かなり難解だったが面白かった。

R41
やきすこぶさんのコメント
2024年5月17日

鑑賞してからだいぶ経っているので私の記憶違いかもしれないけど、オープニングで変な反転させたところから非現実なのかと解釈しちゃったんですよね。
違う気もしているんですけど。

やきすこぶ
Bacchusさんのコメント
2024年5月17日

観賞したのが公開当時なので茎わかめは覚えていませんがwファイトクラブわかっていただけて光栄です!

Bacchus
やきすこぶさんのコメント
2024年5月16日

チェックされているみたいで、レビューを何回か消されたり非公開に差し戻された事が有ります。
感想が無いとか関係ない事だけ書くと駄目みたいです。

私はこの作品、ラストだけが現実でそこまでは非現実と解釈しちゃったので、感想が無くなってしまいました。
自分が低評価にした作品を高評価にしている方のレビューは参考になることが多く、今もレビューを読ませていただいて、なるほどなと思っております。
そういう楽しみが有るのも、このサイトの良いところですね。
(と、チェックしている運営の人にゴマをすっておきます)

なんか変なコメントで、すみません。

やきすこぶ