「人生にストーリー構成は無い。或いは実話を映画化するということについて。」20歳のソウル jsさんの映画レビュー(感想・評価)
人生にストーリー構成は無い。或いは実話を映画化するということについて。
実在の高校の吹奏楽部が舞台の映画であるようだという程度の予備知識で鑑賞。
前半は気恥ずかしさを振り切って過剰なほど真っ直ぐに描かれた青春もの、しかしこれが後半急に難病ものに転換する。病状をめぐるあれこれが描かれていくうちにどうやらこれは実話を元にしたストーリーなのだろうなあと思い始める。
そう思うと、伏線なく急に病気が判明したり、急に作曲の才能を発揮したのも実話を元にしているからなのだろうなと思えてくる。重大な病気になって闘病、手術を経て生還したと思ったら、転移は無いと医者が言っていたのにまた倒れて入院を繰り返す。悲しんだり喜んだりとても忙しく、終盤に入ってきたかなあと思うあたりでも映画の全体像が見えない。
人間の生涯にストーリー構成は存在しないので、脈絡なく思いもよらぬことが起こるのは当たり前だ。だから実話を元にした以上当然なのだろうが、道筋が見えないだけでなく、同じ意味のシーンが重なることも多く、映画の構成として見た場合相当無駄が多いように感じる。フィクションだったらもっとザクザク切るに違いない。また、難病ものになってから、それまで以上に泣かせの演出がこれでもかと押してくる。しかもワンシーンがやたらと長い。
私が苦手な日本映画の特徴とも言える、感傷的なシーンが連なっていく。そして繰り返すがワンシーンがやたらと長い。セリフも劇伴もガンガンに押してくる。私はいったい何を観ているのか? この映画のクライマックスは164人の演奏で主人公を葬送するシーンだと思うが、最初に渋っていた葬儀会社の人が意気に感じて許したのはともかく、何が問題だったのかどのように解決したのか、ファクトがさっぱり分からない。
また、私は吹奏楽が聴きたかったのだが、これも少し物足りなかった。演奏シーンはたくさんあるのだが、指揮者のショットがむやみと多い。あ、佐藤浩市の演技は流石に素晴らしく説得力満点です。
ということで、実話を映画化するということについて考える一本であった。