劇場公開日 2022年5月27日

「「今日はどんな贈り物?ワクワクしながらリボンを...」全力の生きざまが突き刺さる」20歳のソウル 飯田亜美さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「今日はどんな贈り物?ワクワクしながらリボンを...」全力の生きざまが突き刺さる

2022年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

ほとんど前知識もなく、実話であるということと、見た人の話では「すっごくよかった」という前情報のみで観に行きました。
泣けました。思い出しただけで泣けます!涙腺崩壊ポイントは後半全部です。

映画の前半では、主人公の浅野大義(神尾楓珠)は青春を謳歌しつつ、ストーリーは矢継ぎ早に進んでいきます。映画の構成的に、こんな輝かしい高校時代がテンポよく進んでよいのだろうかと疑問が頭をもたげてきました。それもそのはず、後半になるといっきに物語のテンポが遅くなります。大義の体は、がんに侵されていたことが判明します。

実話で映画化されているということは、、と考えをめぐらせるとて、悪い予感しかしません。何度となくがんを克服するのですが、三回目までも危機が訪れます。映画の中の世界にいたとしたら、助かってくれと願わずにはいられません。そしてやはり、悪い予感のとおりになってしまうのです。どうして神様はこんな残酷なんだろう、と思ったりもしました。
..と、少し悲観的になってしまいましたが、この映画の本質は全力で生ききった大義を通して希望を与える物語です。作中の同級生、先生、家族と同じように、映画を見た僕も見終わったあとは大義に大切なことに気づかせてくれて「ありがとう」と言いたくなりました。例えば時間を大切に、いまという瞬間を大切にするということ。「生きる」ではなく「生ききる」ということ。

「一日一日、生きているだけで幸せ。今日という一日は神様からの小さな贈り物。」
「何が入ってるんだろうと楽しみにしながら贈り物のリボンをほどくんだ」
病魔と戦っているときの大義が作曲した音楽について語った言葉です。
まさに今の自分に胸に刻んでおきたい言葉でした。「あ~眠い」なんてさえない気持ちで起きて、そのまま一日をスタートしてしまった自分がいます。しっかり自分の目を覚ましたいと思いました。

普段はポジティブで病気と闘いながら、全力で生きる大義。それでも大義が恋人の前ではじめて見せた、弱音、本心。声をふるわせるシーンは、見ている人の心に突き刺さり、はげしく揺さぶられました。

終始、作中の登場人物とともに思わず涙があふれてくるシーンがたくさんありましたが、大義の生き方に力が湧き上がってくる感じがして、希望を与えてくれて、背中を押されるような思いがする映画でした。

飯田亜美