「クリント・イーストウッドの諸作品へのリスペクトが滲んだ地味ながら力強いロードムービー」マークスマン よねさんの映画レビュー(感想・評価)
クリント・イーストウッドの諸作品へのリスペクトが滲んだ地味ながら力強いロードムービー
アリゾナの国境近くで一人暮らしので元海兵隊員のジムは国境近くの路上でカルテルに追われてメキシコから越境してきた母子ロザとミゲルに助けを求められる。国境越しに母子を引き渡すように求めるカルテルの一味と激しい銃撃戦となってしまったジムは何とか母子を連れて逃げ切るが銃弾を受けてしまったロザはジムにミゲルをシカゴにいる親戚の元に連れて行ってほしいと言い残して生き絶える。自責の念に駆られながら一旦はミゲルを警察に引き渡したジムはロザの遺言に従うことを決意するが、国境を自由に行き来できるカルテルにとってジム達の足取りを追うことは造作もないことだった。
『LOGAN/ローガン』、『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』、『ターミネーター:ニューヘイト』、『ランボー ラスト・ブラッド』といった作品群に通底するメキシコからの越境と長い旅で育まれる友情や血縁を超えた家族愛そして贖罪が色濃く描かれた地味ながら力強い作品。とりわけクリント・イーストウッドが自身の作品で繰り返し滲ませている贖罪の描写が痛々しく、『グラン・トリノ』やまだ未見の『クライ・マッチョ』と比べてみたいと思いました。それもそのはずで本作の監督はロバート・ロレンツ。クリント・イーストウッド作品でアシスタント・ディレクターや第2班監督を長年務めている人物。クリント・イーストウッド主演の『人生の特等席』では監督を務め、メジャーリーグのスカウトとしての仕事に没頭するあまり家族を顧みなかった男が娘と向き合う様を叙情的に描いているので本作のトーンには納得感あり。全編に渡ってクリント・イーストウッドの影響が滲んでいて、安ホテルでジムとミゲルがぼんやり観ている映画が『奴らを高く吊るせ!』だったりするところにもさりげないオマージュを覗かせています。
チョイ役ですが、ガソリンスタンドの売店レジの女の子を演じているアンバー・ミッドサンダーがえらくキュート。彼女はリーアム・ニーソンの次作『アイス・ロード』にも出演しているそうなので、そちらも必見ということかと思います。