「【737MAX】」ブラックボックス 音声分析捜査 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【737MAX】
この作品が公開される前の1週間ぐらいの間に、ボーイング737MAX機に関する記事が複数掲載された。
一つは、ブルームバーグが最初に配信した、737MAX機の運航を中国政府が3年ぶりに認めるとしたもの、
もう一つは、朝日新聞デジタルが伝えた、なぜボーイングは魔のショートカット(本来は慎重に実施すべきことを疎かにしたという意味)をするに至ったのかという記事だった。
ボーイング737MAX機は、2018年、インドネシアのライオン・エアとエチオピア航空の運航する機体が相次いで墜落するという事故を起こしていた。
ボーイングが、欧州のエアバス社との競争にさらされ、いよいよ顧客を奪われる局面に至り、予定を繰り上げて燃費の良いエンジンをいち早く機体に搭載させるにあたり、機首上げが起きやすい元々の737機の特性の軽減などを含めて本来は基本設計の再設計が必要なところを、操縦支援システムの導入をすることによって乗り切ろうとし、それがあだになったのだ。
本当は、もっと詳しく説明を書かないといけないのだけれども、興味のある方は、事故の状況や記事を検索してみて下さい。
(以下ネタバレ)
映画をご覧になった方のなかで、きっとお気づきの方はいると思うけれども、機首上げの特性や操縦システム支援は、まさに......この作品でも描かれたところだ。
映画で描かれた事故の直接的な原因は、サイバー攻撃だったが、過度に自動運行に頼り制御不能に陥ったところと、運航支援システムを徹底的に周知することなしに、737MAX機の販売を安易に拡大、操縦支援システムが正しく機能しなかったところはなんかは、本当にこの作品に似ている気がしてならない。
企業が嘘をつくということについては、ある化学メーカーの隠蔽が映画の題材として取り上げられているが、甚大な事故を起こす可能性があるこの作品のようなケースでは、慎重すぎるほど慎重じゃないと本当に取り返しがつかないことは想定される。
コロナ禍が収まっても、当面737MAX機には乗りたくないなと、僕は思ったりする。
作品については、終盤の良心の呵責や秘密にたどり着く仕掛けなど楽しめたが、マチューが、あんな交通事故で命を落とすエンディングが必要だったの?とか、結局サイバー攻撃が原因ってところが、逆に企業の悪どさを軽減してしてしまっているように思えて、なんかちょっと納得がいかないところもある。
ボーイングに気を遣ったのかしら?