「確かにコンサートなど不可能だった」天才ヴァイオリニストと消えた旋律 頼金鳥雄さんの映画レビュー(感想・評価)
確かにコンサートなど不可能だった
確かにあの事実と衝撃の後で演奏などできないでしょう。失踪しなくてもドヴィドルのコンサートは中止になったかもしれません(同様の事実を知ったものは気がふれてしまいました)。でも知るタイミングがもっと早かったら。知ったのがリハーサルと本番の中休みなんかじゃなく、彼がその事実に向き合う時間がたくさんあったなら。そう思わずにはいられませんでした。
振り返ればドヴィドルが戦争被害者から宝飾品を奪うのだって、ちゃんと理由があったんだと思うと泣けてきました。お父さんの作ったもの、売ったものが無いか。罪を犯してまで家族の面影をさがしていたんだなと思います。
このお話は主人公のマーティンと失踪したドヴィドルをそれぞれ3人の役者が世代ごとに演じています。そしてドヴィドルはどの年齢の役者もすごい弓さばき(というのかしら)を見せてくれます。特に少年時代の子は子役だけに目を引きます。防空壕の中のセッションも見どころです。
でも私が一番好きなのはピチカートの練習シーンかな。天才というものはあんな練習を毎日何時間もやってやっとできあがるんですね。
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