「アヴェマリア」沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家 佐和子さんの映画レビュー(感想・評価)
アヴェマリア
パントマイマーとして有名なフランスのマルセル・マルソーがまだ無名の頃の話。ずっと舞台に関わってる私はマルセルの名前は勿論知ってたけど生きてた時代やこのエピソードは多くの人と同じように知らなかった。ドイツに占領されつつある国境沿いに住んでいたマルセルの家族。ひょんなことからナチスに親を殺された孤児たちの面倒を見ることになった芸術家の卵マルセル。ナチスの占領下にあるフランスでレジスタンスに参加し、ユダヤ人の子供たちを国外に逃す実話を基にした作品。今夏はナチスを題材にした作品が多く、切り口は色々でもやはりユダヤ人に対する蛮行のシーンは必ずあり、この作品も例外ではないので劇場鑑賞にはある程度覚悟が必要。でも!すっっごくよかった…😭
親を失った子供たちをパントマイムで笑顔にするシーンは芸術が戦時下で人の心を癒すというこの題材ならでは。
でも意外とパントマイムのシーンは少なく、後半はナチスから流れるサスペンス色の強いテイストになっててかなら緊迫感があり、主人公や子供たちは助かるんだろうなとわかっていても手に汗握るスリリングな展開です。
アルプスを越えるというとサウンドオブミュージックが思い浮かびますが、あれは実際に山越えしてないのはわりと有名ですね(笑)
本作はリアルにフレンチアルプスからスイスへ逃げる実話をもとにしたシーンが終盤で、ラストは達成感があります。
ただ、フランスとドイツの政治的関係等は最低限の説明しかないのでわかりづらくて帰り道ウィキで調べました💦
そして、この一年多くのアーティストが突きつけられた「芸術は不要不急論」を彷彿とさせるマルセルの俳優への道に反対する父親との印象的な会話があります。体が求める、トイレに行くのと同じだと。
マルセルのパフォーマンスと子供たちの歌声で、劇場にいた人たちは何を感じたでしょう…肉屋を営む父が仕事を失ったからこそ舞台で歌を披露し、戦争が終わったら舞台に一緒に立とうという願いは…😭
昨年見たジョジョラビットとはまた違う切り口でカタルシスが得られます。マルセルがユダヤ人の子達を救った事で、その子達が家庭を持ち命を繋いだということも勿論ですが、ユダヤ人が芸術や科学で優秀な人が多いのもよく知られてることでその点でも意義深いと個人的には思います。
そしてヨーロッパ好きとしては、アルプスの山やストラスブールの美しい街並みも素敵でした!あー、いつ海外旅行に行けるのかしら…