劇場公開日 2021年10月29日

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「正義の国とは…」モーリタニアン 黒塗りの記録 MARさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5正義の国とは…

2021年11月16日
PCから投稿

悲しい

怖い

難しい

2001年9月11日の同時多発テロに関与したとして逮捕されたモーリタニア人を弁護すべく、人権派弁護士の女性が奮闘する物語。

対するは超大国アメリカの政府。グアンタナモの囚人たちを戦犯法廷で裁けとの命令を受けた中佐も、時を同じくして動き出していく。

911を巡るアメリカの闇を描いたサスペンス作品。

無実を主張するが、どこか諦めた様子のスラヒ。救おうとするナンシーとテリーだが、やっとの思いで手に入れた手記は多くが黒く塗られており…。更なる奔走の末手に入れた資料には驚愕の内容が。そして、更に更に突き詰めて辿り着いた機密文書に書かれていた内容とは…。

これが実話だというから驚き。
アメリカのてまえよく映画にできたなと思うほどに。

エグいシーンのある映画っていくつも観てきたけど、そういうのって大体ナチスだったりどこぞのならず者国家だったり一昔前の世界の話だったりしますからね。

今回も、序盤スラヒを見た時は、死ぬほどやつれてる様子もなかったし、大変失礼ながら、言うて先進国の保護下だからそこまでヤバくは扱われてないでしょ、なんて思ったのだが…。え…これが21世紀の正義を謳う国のやり方!?

映画作品なので、どこまでが事実かは本人たちのみぞ知るといった所だけど、これが真実なら正義などいったいどこに。。

本作はキャラクターも皆魅力的。

冷徹で敏腕なナンシーと、まだまだ未熟なテリーの対比が面白い。七面鳥のくだりはゾクッとした。

また、カウチ中佐も、作中では敵役(?)でありながらも、ただ真実を追い求める法律人でありつづける姿勢にグッときた。それでいて、親友を奪ったテロに対する感情も垣間見える姿が非常に印象的だった。

とにかく、現代のアメリカにおいてこんなことが起こっていたとは。
勿論、きれいなばかりが正義じゃあ無いんだろうけど、これは…。

恐るべき衝撃に打ちのめされた作品だった。

MAR