「だからこそ、のもうひとつの世界」プロミシング・ヤング・ウーマン 矢吹経一さんの映画レビュー(感想・評価)
だからこそ、のもうひとつの世界
酒に酔ってたので覚えていない。若気の至りで当時のことを忘れてしまった。
この男どものもっともらしい言い訳を、ものの見事に打ち破る主人公。
復讐はいいとはいえない。法律に則って行動しなければならない。
そんなのは先刻承知の世界。
レイプ事件における長期にわたる裁判では、傷ついた女性の気持ちは救われない。男どもが本当に悪いことをしたという自覚もいまひとつ見出せない。
だからこその、もうひとつの世界。
そういった世界だから、現実を超越した奇抜な色彩に違和感はない。
映画だから、だからこその世界を描くのだ。そこに女流監督エメラルド・フェネルのポリシーを感じる。
描き方は自由。現実離れした空間で、真実を絞り出したい。その思いが伝わってくる。
表向きはエリート医学生だからといって、男の部分では欲望のおもむくまま、酒の勢いで女性を傷つけた。その天罰は重すぎるのだ。
そこは譲れない。加害者と被害者という事実は変わらない。そして真実はひとつ。
本作を観て、同じレイプ事件の秀作で、ジュディ・フォスターが主演した『告発の行方』を思い出した。
本作のケリー・マリガンが、ジュディ・フォスターの思いを、新しい視点で代弁しているように見えた。
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